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文献詳細

雑誌文献

胃と腸10巻11号

1975年11月発行

今月の主題 胃の良・悪性境界領域病変

主題

胃の良・悪性境界領域病変―私はこう思う

著者: 谷口春生1 和田昭1 建石竜平1 岩永剛2

所属機関: 1大阪府立成人病センター病理 2大阪府立成人病センター外科

ページ範囲:P.1449 - P.1454

文献概要

 約10年以前のことであるが,著者がはじめて今日いうところの「異型上皮」の生検組織診断に接したさい,「悪性として処置されたい」旨のreportを記載して,臨床の先生方からお叱りを受けたことがある.その患者が循環器・呼吸器に合併症をもつ高齢者で,生検施行の前後はちょうど寛解期にあって,高いriskながら胃切除術の機会は今をおいて期待できないが,もしも悪性の証拠があれば敢て手術に踏み切るので,病理の判断に待つとのことで,下駄を預けられた形になった.そこで,胃病理の諸先輩をわずらわして御意見をいただき,参考にしたが,何をおいても手術をすべしとの御意見から,5年先には癌になる,10年先までは大丈夫,あるいは悪性化はしない,また正常化するだろうといった,いろいろな御意見を賜ったものである.今からみれば定型的な良性・悪性境界領域性病変で,胃生検組織分類のGroup Ⅲの組織であり,患者は手術されることなく経過観察され,7年後に原発性肺癌のために亡くなったが,胃病変に関してはその間,形,大きさ,性状に変化を認めなかった.

 このような病変は,その後,胃の手術材料中に単独に,あるいは癌病巣と併存して検討される機会も多く,良性・悪性境界領域病変1)~5),異型上皮6)7)8),あるいはⅡa subtype9)などと呼ばれ,形態学的・生物学的にその性格がよく理解されるようになった.しかし,その異型腺上皮増生巣が病理学的な疾患単位として如何なる位置におかれるべきかについては問題が残っているようである.著者はかねて病巣を構成する上皮細胞のうち,特にパネート細胞の分布する位置に問題を求め10),同じく,病巣内において核分剖像のみられる位置にも特徴のある所見を得たので,それを中心に私見を述べたい

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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