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今月の主題 胃の良・悪性境界領域病変
主題
文献概要
腫瘍の良・悪性の組織学的判定は細胞異型,構造異型などの有無によってなされる.細胞異型とは胞体や核の大きさ,形,染色性の不規則性,原形質の胎生期的単純化(小胞体,ミトコンドリヤ等の小器管の発育不良),核クロマチン量の増加,核原形質比の増大,分裂像増加,細胞配列の乱れ(極性の喪失)などの総合的所見である.これらの所見は低分化cataplasia,退分化anaplasiaともいえるが,正常の胎生期の未分化細胞とは様相が異る.しかし,多少の差こそあれ,慢性炎症などの病的環境下における再生上皮にも異型化が現われ,ときにその異型化した再生上皮が過形成の傾向を示し,形態学的に悪性腫瘍との鑑別が困難となることがまれではない.筆者は異型上皮を,1)腸型異型上皮,2)胃型異型上皮,3)中間型異型上皮,4)幹細胞型異型上皮に分け,腸型異型上皮はさらに吸収上皮型,杯細胞型,パネート細胞型に,胃型異型上皮はさらに表面上皮型,偽幽門腺上皮型,その他(主細胞型,壁細胞型)に分けている1).実際に問題になるのは吸収上皮型,胃表面上皮型,中間型および幹細胞型である.このうち最も重要なものは吸収上皮型異型上皮で,本論文ではこの型の異型上皮に重点を置いて述べることにする.
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