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胃と腸ノート
興味ある胃病変の病理解説(4)
著者: 下田忠和1 佐野量造1
所属機関: 1国立がんセンター研究所第一組織病理部
ページ範囲:P.454 - P.454
文献購入ページに移動本例は食道静脈瘤と胃宥穹窿部の進行癌のために臨床的検査は不充分であったが,胃レ線検査では幽門部のポリポージスが疑われた.切除胃所見では幽門部から胃角上にかけて全周性に多発した隆起性病変を認める.特に大彎部に密在している.大きさは比較的均一で,くびれを有した球型ないし半球型の隆起である.表面は平滑で光沢を有している.これらの隆起は一部で数個融合している(Fig. 1).肉眼所見からは限局性ポリポージス,疣状胃炎,Ⅱa集簇型の早期胃癌,悪性リンパ腫が考えられる.組織学的に検討した結果では,この隆起性病変は全て粘膜内に限局した早期胃癌で,その拡がりは胃角上に及び一部Ⅱbを伴ったⅡa集簇型の胃癌であった(大きさ16.0×10.0cm).胃穹窿部の病変はBorr. Ⅱ型の進行癌であった(Fig. 2).幽門部病変の割面はFig. 3に示すように隆起部はⅡaの癌で,周辺のⅡb部右に連続している.組織像は分化した腺管癌であった(Fig. 4).
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