icon fsr

文献詳細

雑誌文献

胃と腸10巻5号

1975年05月発行

今月の主題 消化管カルチノイド

主題

消化管カルチノイドの病理組織学

著者: 遠城寺宗知1 渡辺英伸1

所属機関: 1九州大学医学部病理学教室第2講座

ページ範囲:P.615 - P.624

文献概要

 1907年Oberndorferが異型性の低い組織像で発育が緩慢な小腸腫瘍に通常の癌腫とは異なるものとして,“カルチノイド腫瘍”なる名称を与えた.以降この腫瘍細胞に銀親和性(還元性)(argentaffinity)が指摘され,Kultschitzky細胞由来が説かれた.生化学的には腫瘍が5-hydroxytryptamine(5-HT),すなわち,セロトニンを産生し,一部の例でカルチノイド症候群を惹起することがわかり,カルチノイドの全貌が判明したかにみえた.しかるにその後上記カルチノイドとは異なった症状を呈し,ヒスタミンと5-hydroxytryptophan(5-HTP)を分泌し,好銀性(argyrophilia)のある胃カルチノイドが報告された.1963年にはWilliamsらによりカルチノイドの胎生学的発生部位を基盤にした斬新的分類が試みられ,前腸,中腸,後腸から発生するカルチノイドの差異が指摘された.これは多彩で複雑なカルチノイドを極めて明解に分類した卓見であった.この分類の大局的正当性は,のちにBlackらによって電顕的に,曾我らの人カルチノイド多数例の組織学的,組織化学的分析によって実証されている.

 一方,胃腸管には5~10種の形態学的に内分泌機能を有するとみられる細胞があり,ガストリン産生のG細胞はgastrinomaの,セロトニンを分泌する銀還元性(argentaffin)細胞は中腸系カルチノイドの母細胞とされるが,これら各細胞と産生物質やカルチノイドとの関係はいまだ充分に解明されていない.また,カルチノイドには腺管構造や粘液産生が見られることがまれでなく,2種以上の特殊分泌顆粒や分泌物質の存在することより,今日では母細胞として分化細胞よりむしろ未熟細胞を想定する傾向が強い.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら