症例
急性出血を来たした胃体部の不整な放射状粘膜出血の1例
著者:
長野一雄1
佐々木寧1
大谷宣人1
海老沢健二2
所属機関:
1函館共愛会病院内科
2海老沢外科胃腸科
ページ範囲:P.807 - P.813
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Palmer,Jones,Hirschowitz,川井らパイオニアたちの努力によって,現在上部消化管出血に対しては緊急あるいは早期内視鏡検査を行ない,出血部位と出血源を確認し最も適切な治療に努めるのがルーチンとなってきた.しかし,緊急事態下で再出血の危険性や血液残溜による診断能の低下といった制約もあり,出血部位と出血源を確診するのが困難な場合もときには経験する.さらに内視鏡検査を行なっても全く確認できないか,あるいは出血部位が十二指腸以下であり,出血が続いていると考えられる徴候がある時,その取り扱いには苦慮せざるを得ない.筆者らは感冒様症状に続いて起きた下血を訴えた患者で,初回消化管出血時には出血源不明のまま止血し,第2回目の出血時には内視鏡的に出血部位を確認し手術,切除胃にて放射状および線状の粘膜出血を認めた.病理組織学的にMallory-Weiss症候群や一般の出血性びらんなどとの異同も論じられたが,結局この粘膜出血の本態について明らかなことは知られなかった.文献を種々渉猟したが本例のような報告は見あたらず,新しい病像である可能性も考えられたのでその概要を報告する.