研究
小児例を含む家族性大腸ポリポージスの上部消化管病変についての考察
著者:
飯田三雄1
八尾恒良1
冬野誠助1
尾前照雄1
渡辺英伸2
大里敬一3
所属機関:
1九大医学部第2内科
2九大医学部第2病理
3九大医学部第1外科
ページ範囲:P.1241 - P.1250
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家族性大腸ポリポージスは,大腸にびまん性に無数の腺腫性ポリープが発生する比較的稀な疾患として知られている.高率に大腸癌が発生することもあって,従来の研究は主に大腸病変に限られたものであった.そのため本症における上部消化管についての検索は,ほとんどなされていなかったといえる.1974年宇都宮ら1)は胃の精密検査を行ない得た6家系15症例中10例(66.7%)に胃ポリープを合併していたと報告し,上部消化管に対する精査の必要性を強調した.引き続いて大里ら2),牛尾ら3)もほぼ同様の頻度で胃病変の合併をみたと報告している.しかし,十二指腸・小腸病変の合併に関しては,同部位が胃に比して診断困難なためか,ほとんどその報告をみない.したがって,これら上部消化管病変の発生時期および発育過程などに関しては,ほとんど知られていないのが現状である.
そこでわれわれは胃・十二指腸に微細な多発性腺腫を認めた本症2家系5症例(小児3例を含む)を報告し,合併十二指腸病変の特異性,小児例における病像の特徴,および本症の自然経過などについて,若干の考察を加えてみたい.