icon fsr

文献詳細

雑誌文献

胃と腸11巻1号

1976年01月発行

今月の主題 早期胃癌肉眼分類の再検討

主題

早期胃癌肉眼分類における問題例の提示

著者: 佐野量造1 下田忠和1

所属機関: 1国立がんセンター病理部

ページ範囲:P.17 - P.24

文献概要

 巻頭の市川論文でも述べられているように小誌編集委員14名が,肉眼分類の問題点を明らかにする一つの手段として国立がんセンターの早期胃癌100例(連続番号)を読影分類した.方法は1例ずつ切除標本の全体像と部分拡大像をスライドで投影し,早期胃癌の病変部を指示した上で分類した.その中でもとくに分類のバラツキがはなはだしかった症例を提示し,その問題点を指摘したい.

〔第1例〕

患 者:59歳 男

 胃角部,小彎を中心として前後壁にまたがる線状潰瘍があり,その中央には深い粘膜欠損(開放性潰瘍)があり,前後壁の部では瘢痕化している.この部の線状潰瘍に集中する粘膜ひだを注意してみると前壁およびそれより連続して小彎側に明らかな浅い粘膜陥凹(Ⅱc)の所見がみられる.しかし他の部の粘膜ひだには異常はみられない.中心の粘膜欠損はその陥凹がかなり目立っておりⅢの所見であり,肉眼的にはⅢ+Ⅱc(片側性)と診断される.この例の14名の委員による集計ではⅢ+Ⅱcとしたものが大部分で71.4%であるが,Ⅱc+Ⅲとしたものが28.5%であった.中心の陥凹をⅢと見なした点には異論はないが,Ⅲ+Ⅱcとするか,Ⅱc+Ⅲとするかについては,Ⅲの部がより目立ち,Ⅱcの部がこれより小範囲のときにはⅢ+Ⅱcとするのが妥当であろう.開放性潰瘍の一側(または片側性)にのみ小範囲に存在する早期癌例は,Ⅲ+Ⅱcであろう.またⅢ+Ⅱcとするか,Ⅱc+Ⅲとするか迷うような例はⅢの占める範囲とⅡcのそれがほぼ等しい場合に生ずる問題である.これについて筆者らは,深かく目立つⅢの方を優先してⅢ+Ⅱcと分類している.この例をⅢ+Ⅱcとするにはあまり問題はなかろう.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら