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文献詳細

雑誌文献

胃と腸11巻1号

1976年01月発行

文献概要

症例

肛門部病変を伴った大腸クローン病の1例

著者: 荒川広太郎1

所属機関: 1大腸肛門科荒川クリニック

ページ範囲:P.99 - P.105

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 典型的な肛門部病変を伴った肉芽腫性大腸炎(大腸クローン病)の1例を経験し,現在まで3年余に亘って臨床的,病理組織学的に経過を観察し得たので報告する.

症例

 患 者:25歳 女性 店員 独身

 主 訴:粘血便,貧血

 家族歴:特記することなし.

 既往歴:慢性便秘,高度の蝕歯,扁桃腺炎による発熱多し,虫垂炎の既往なし.

 現病歴:20歳頃より紙に着く程度の無痛性肛門出血あり,その頃から便秘がなくなり,1日2回位排便がみられるようになった.

 昭和46年1月頃から腹鳴,便意頻回,肛門より粘血性の分泌物をみるようになった.

 肛門の外縁に無痛性疣状凹凸を触れるようになったので,某外科を受診し痔核の診断を受けた.同年12月,粘血便の回数が増加すると共に,食欲不振,全身倦怠,顔面蒼白,心気亢進,眩暈,四肢の浮腫を訴えるようになった.続いて四肢に紫斑が現われ,頸部および前胸部に瘙痒感なき湿疹状皮膚変化を認めた.

 昭和47年1月,某病院に精査の目的で入院し,胃腸レ線検査正常,ツ反応陰性,胸腔内および関節腔内に滲出液ありといわれ,ロイマチス様疾患と診断され10日後に退院した.

 しかし間もなく,腹部膨満,下血が著明となったので腸疾患を疑って当院を訪れた.

 初診時理学的所見:昭和47年2月9日,初診時の所見は,体温38.5℃,脈拍112,口唇は蒼白,全身の浮腫を認め,高度の貧血を思わせた.下顎から前頸部にかけて淡褐色の色素沈着,また,肘関節および膝関節近くに径1cm前後の皮下出血斑を多数認めた.口腔粘膜,口唇には色素沈着および発疹を認めず.

 歯牙はきわめて不良で,ほとんど全歯が蝕歯で末治療の状態にあり,とくに両下顎臼歯は根部を残して消失していた.口蓋扁桃は中等度に肥大していたが,発赤白苔なし.

 胸部聴打診では,とくに湿性ラ音なし,濁音界の異常も認められず,胸膜炎を思わせる所見なし.腹部はやや鼓腸を認めるが,腹水を触知せず,右季肋部に肝辺縁二横指を触れる,圧痛なし.

 リンパ節は両ソケイ部に小指頭大の硬結を触れる以外は,とくに全身性のリンパ節腫張を認めず.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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