今月の主題 胃スキルスの病理
主題
胃硬癌の臨床的ならびに病理組織学的所見
著者:
中村恭一12
菅野晴夫2
杉山憲義3
丸山雅一3
馬場保昌3
高木国夫4
所属機関:
1筑波大学基礎医学系病理
2癌研究所病理部
3癌研付属病院内科
4癌研付属病院外科
ページ範囲:P.1275 - P.1284
文献購入ページに移動
胃癌の1つであるいわゆるスキルスは,一般的に,胃癌の中で予後の悪い癌であるとされている.そして,わが国においてはスキルスといった場合には,癌の肉眼型であるBorrmann 4型あるいはlinitis plasticaを意味する場合がある1)12)26)27)30).一方では組織水準で,スキルスは胃癌の特徴ある組織型の1つとして硬癌adenocarcinoma scirrhosum22),scirrhous carcinoma13),carcinoma fibrosum3)7)と呼ばれている.さらには,このような組織型は乳癌にも多いものである.このように,いわゆるスキルスという言葉は胃においては肉眼的水準および組織学的水準での両方の意味を含んでいて混乱を与えている.スキルスという言葉を用いる場合にはどの臓器でどの水準の意味で用いているのかを明確にしておく必要がある.
著者らは,スキルスという言葉は癌の形態ではなく癌の質的なことを意味するものであるとの立揚から,胃におけるスキルスの臨床的ならびに病理組織学的なことについて統一的にながめてみた.