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文献詳細

雑誌文献

胃と腸11巻10号

1976年10月発行

文献概要

研究

胃スキルスの臨床的ならびに病理組織学的考察

著者: 郡大裕1 竹田彬一1 川井啓市2

所属機関: 1京都府立医科大学第3内科学教室 2京都府立医科大学公衆衛生学教室

ページ範囲:P.1327 - P.1335

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 近年の胃X線および内視鏡診断学の進歩は目覚しく,X線的には二重造影法の開発・普及によって1)~6),また内視鏡的には内視鏡機器の改良5)~11)あるいは生検や色素撒布法などの補助的診断法12)の導入によって,微小な早期胃癌の診断に代表される形態学的な胃診断学はほぼ完成の域に達したといっても過言ではない.しかし,粘膜面の凹凸性変化に乏しいⅡb型早期胃癌の診断13)~19)や比較的短い期間に急激な進展を逐げたと思われるスキルスの早期診断20)~27)にはいまだ問題が残されている.

 著者らはスキルスを胃壁内のびまん性の強度の線維化や癌浸潤のために胃壁が著しく肥厚・硬化し,胃内腔の狭窄を来す深部浸潤癌と解釈している23)25).スキルスの大部分は癌の粘膜内進展範囲が広く原発部位の決定が難しい例が多いが,中村ら52)は胃を胃体部・中間部・幽門前庭部の3部位に分けて,癌の粘膜進展部が主として占める部位別にlinitis plasticaを分類し,胃体部例が93例中55例ともっとも多く,幽門前庭例は1例もなかったという.著者らはスキルスを主として前庭部における胃壁の硬化を来し,幽門狭窄像を呈するlinitis plastica型と胃体部における胃壁内の強い間質反応のために著しい皺襞の肥厚を来すgiant folds型とに分類している.しかし,スキルスにおいては,胃壁全体の硬化が6カ月ないし1年と比較的短期間内に完了するものが多いため20)~25),スキルスのretrospective studyから胃体部の陥凹型早期胃癌の一部がその初期像と考えられてはいるが20)28)~30),その初期像を正確に把握することははなはだ難しい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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