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書評「腹部単純X線診断」
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著者:
藤井正道1
所属機関:
1聖マリアンナ医科大学
ページ範囲:P.486 - P.486
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日常診療において,診療のすすめ方はそれぞれの分野で一定の順序があるが,X線診断部門においては特にこれが基本であり,重要である.しかし,X線診断方法のめざましい進歩に伴い,とかく術技を重点にしステップをふまないX線撮影が行なわれることがあるが,急性腹症の場合はもちろんのこと,腹部のX線診断に際し,第一のステップとして必要なのは単純撮影であることは,今さら改めていうまでもない.また日常,腹部単純撮影の件数は比較的多いが,いざ撮影フィルムを読影する場合,読影者に充分な知識がなければ,撮影フィルムはただ単なるフィルムベースでしかなく,患者にとってはむだな被曝となってしまうだろう.Susmanは,「We see only what we look for and we look for only what we know」と述べているが,まさに腹部単純フィルムの読影にあたっても,どのようなポイントに留意して読影するか,また正常像と異常像とに対する確実な知識をもっているか否かなどが基本として大切となる.
本書は以上の諸点に意を用い,単純フィルムを読影するにあたって必要な項目を網羅し,かつそれらに対する適切な解説を行い,さらにポイントとなる所見は,鮮明なフィルムを配して,学生のみならず,放射線医学に志すものや,第一線の実地医家に反覆してひもとく興味をおぼえさせるように工夫してあるなど,座右の書としてきわめて適切である.特に学生や,これから臨床医学の分野で活躍する若い医師のために,代表的なフィルムを基本に,永年の臨床経験に基づく教訓的なフィルムや極めてまれな症例をも加え,それらの特徴的パターンについての解説を行い,さらに,いわゆるサインといわれる所見の内容を,きわめて豊富にとり入れてある.