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文献詳細

雑誌文献

胃と腸11巻4号

1976年04月発行

今月の主題 研究・症例特集

症例

潰瘍性大腸炎と合併した直腸癌の1例

著者: 田中乙雄1 鰐淵勉1 川口正樹1 曽我淳1 小山真1 武藤輝一1 田代成元2

所属機関: 1新潟大学医学部第1外科教室 2新潟大学医学部第3内科

ページ範囲:P.499 - P.502

文献概要

 本邦における潰瘍性大腸炎の研究は最近著しく活発となり,特に本症が慢性かつ難治性であるため注目される疾患の1つに数えられている,本症は欧米では比較的稀でない疾患として内科,外科両域から種々の点について研究がなされており,特にその癌化は古くから問題とされてきた.本邦でも潰瘍性大腸炎の手術症例は次第に増加しているが,なおこの癌化についての報告例は少ない.最近われわれは潰瘍性大腸炎で長期経過中に直腸に癌の発生した1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

症例

 症 例:加○幸 62歳 女性

 主 訴:血便,下腹部不快感

 家族歴:父系祖母,父:糖尿病.長兄:直腸癌

 既往歴:22歳時に肋膜炎,約5年前より糖尿病にて食事療法,薬物療法を受けていた.

 現病歴:約35年前より時々鮮血便に気づいていた.1941年,某医にて潰瘍性大腸炎の診断を受け,キノヨシン,ヤテミンを投与され,症状の改善をみていたが,同様の症状は年4~5回あり,いずれも約1カ月位で上記薬物投与により寛解し,1953年頃には完全に症状は消失した.しかし1973年1月,再び排便時に軽度の血便が出現したため,3カ月後に某医を受診.サラゾピリン3錠/日で3カ月間服用した.その後自覚症状は特になく経過していたが,1974年9月裏急後重が増強して,本学内科受診,直腸鏡検査および生検の結果,直腸癌の診断を受け,当科に入院した.

 現 症:体格中等度,栄養良好.眼球,眼瞼結膜に黄疸,貧血はなく,胸部は理学的に異常を認めない.脈拍72で整.血圧140/90mmHg.腹部は平坦で圧痛認めず,腫瘤も触知しない.肝,脾,腎はふれない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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