icon fsr

文献詳細

雑誌文献

胃と腸11巻5号

1976年05月発行

今月の主題 胃潰瘍癌の考え方

主題

胃液酸度からみた早期胃癌の陥凹化についての考察

著者: 古賀成昌1 井上淳1 安達秀雄1

所属機関: 1鳥取大学医学部第1外科

ページ範囲:P.585 - P.590

文献概要

 胃潰瘍が母地となって癌ができるのか,癌があってこれが二次的に潰瘍化するのか,すなわち,潰瘍が先か,癌が先かの問題は古くから論じられてきてはいるものの,なお,解明されていない問題である.近時,内視鏡,生検などの診断技術の進歩によって,長期間にわたって胃病変を観察できるようになった結果,悪性(癌性)の潰瘍も良性の潰瘍と同じように,治癒と再発をくりかえすという,いわゆる悪性サイクルの概念がでてきた2).このような知見から,Hauserによって示されたいわゆる潰瘍癌の組織学的特徴も,いささかぐらついてきているのが現状で,癌先行か,潰瘍先行かを切除標本の病理組織所見からのみの判定には限界があるように思われる.すなわち,Hauserによって規定された潰瘍癌も,悪性サイクルの中のある病期の所見にすぎず,はじめに癌があって,これが二次的に潰瘍化した時期の病像にすぎないとの考えが出されるようになってきた1)

 では,この癌巣の二次的潰瘍化はどうして起こってくるのであろうかということが問題となってくる.これにはいろいろの要因があるかと思われるが,まず,胃液による消化作用が考えられよう.癌粘膜は正常粘膜と異っているため,胃液による消化,すなわち,潰瘍化が起こるであろうことは容易に推測される.そこで,本稿では切除早期胃癌例をえらび,これら症例の術前胃液酸度の面から,早期胃癌巣の潰瘍化について,若干の考察を行ってみたい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら