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文献詳細

雑誌文献

胃と腸11巻5号

1976年05月発行

文献概要

今月の主題 胃潰瘍癌の考え方 主題

胃潰瘍の癌化について―ラットによる実験結果から

著者: 白井智之1 花之内基夫1 伊東信行1

所属機関: 1名古屋市立大学医学部第1病理

ページ範囲:P.599 - P.604

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 胃潰瘍を発生母地とする潰瘍癌の存在については臨床的に極めて重要な意義を背負って古くより多くの研究がなされてきた.近年,内視鏡などの診断技術の向上と共に直接胃潰瘍の経時的観察が可能となり,潰瘍癌をめぐる種々の問題に解決のきざしが見えたかに思われた.しかし悪性サイクルの概念9)とそれに伴う組織学的判定の困難さゆえに,潰瘍癌の頻度にも相当のばらつきがみられ,胃潰瘍癌の否定的意見3)11)15)と肯定的意見6)14)の対立となって表われているのが現状である.

 このような臨床的研究の進展と共に実験的解析が問題解決の重要な1手段として取りあげられ,多くの努力がなされてきた.しかし実験的解明には2つの大きな問題が立ちはだかってきた.1つは実験的慢性胃潰瘍の作成であり,1つは実験的胃癌の作成である.両者には共にその確実性と作成法の容易さが要求される.前者においては種々の化学物質の投与1)5),胃壁内への異物や化学物質の挿入2)あるいは外科的粘膜切除13)が試みられてきたが,潰瘍の慢性化,確実性,手技の容易性,潰瘍の非穿孔などを満足する方法としては不充分であった.その中でヨードアセトアミドを飲料水に混じ経口投与するという自然に近い簡単な手法によるラット胃潰瘍の発生実験7)17)は上記の条件をある程度満すものとして注目されるわけである.ヨードアセトアミド胃潰瘍は潰瘍発生部位に特徴があり胃底腺領域に限局性に形成される.本論文ではすぐれた胃癌発生物質としてのMNNGを用い胃底腺部慢性潰瘍の意義について最近の成果を中心に述べてみたい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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