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文献詳細

雑誌文献

胃と腸11巻6号

1976年06月発行

文献概要

胃と腸ノート

Ⅱc+Ⅱa型早期胃癌の臨床診断(6)

著者: 倉俣英夫1

所属機関: 1神奈川県立成人病センター

ページ範囲:P.714 - P.714

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 T. S. 66歳 男

 レ線所見:立位充盈像では幽門輪に接して小彎側に強い陰影欠損をみる,欠損部の辺縁は不整な小凹凸を示す.図1の背臥位二重造影像でも幽門部から前庭部の半ばまで壁の伸展性,ふくらみが明らかに悪い.その後壁に不規則に蛇行,あるいは結節状を呈した隆起性病変が集簇してみられる.隆起の輪郭は鮮明で芋虫型に肥大蛇行した一部は病変の中心に引込まれ,ここに不整形のバリウム斑が見える.すなわち潰瘍性病変を合併している,病変部全体の輪郭は柔かい感じを与えるが,圧迫による変形はあまり見られない.内視鏡所見は,レ線像より硬化してみえる環状堤防状隆起と,その中に潰瘍,白苔,出血をみた.周辺には疣状胃炎を思わせる隆起性病変の散在はない.術前診断はBorrmann Ⅱ型の進行癌と診断.

 切除胃肉眼所見:図2,3の大彎切開の新鮮標本で,ほぼ幽門輪に接して小彎を跨ぎ梅花型に蛇行した隆起性病変が明瞭である.その隆起の立ち上がりはくびれを有し,周辺の粘膜とは明瞭に境せられている.蛇行したⅡaの内側は陥凹発赤しⅡcを認める.その中央に結節状の隆起があり,ここに向って蛇行状隆起を介して周囲から粘膜ひだが集中し潰瘍瘢痕を認める.一見蛇行型のⅡa様であるが,本シリーズで示してきたようにUl(+)のⅡcの辺縁でⅡa様発育を示したⅡc+Ⅱa型の早期胃癌と診断した.図4の切片は周辺のⅡa部と中心のⅡc部を示し,Ul-Ⅱsの潰瘍を伴い,大部分はmで,潰瘍辺縁でわずかにsmに浸潤していた.

 本例は病変部分が5.5×5.0cmでかなり大きい範囲の病変であるが,このような場合潰瘍が合併するとさらにレ線像で変形は著しくなりやすい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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