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文献詳細

雑誌文献

胃と腸11巻6号

1976年06月発行

文献概要

症例

反応性リンパ細網細胞増生(R.L.H.)に合併し,短期間に全身転移して死亡した原発性胃細網肉腫の1例

著者: 三戸康郎1 荒木貞夫1 高野平八郎1 犬尾修三1 平塚隆三1 犬塚貞光1

所属機関: 1福岡大学医学部第2外科

ページ範囲:P.767 - P.772

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 胃における悪性リンパ腫とリンパ細網細胞増生(Lymphoreticular hyperplasia)の組織学的鑑別や,リンパ細網細胞増生が悪性化するか否かに関しては,いまだ問題の多いところであり,元来良性悪性を明確に二分することが不可能な組織像を呈することから,あまり厳密な論議は無意味とする傾向があり,一般には悪性化は起こりうるけれども,その頻度はきわめて少ないと考えられている.われわれは44歳の男子で多発性の早期胃癌と診断され胃切除を施行された患者で,反応性リンパ細網細胞増生を伴った多発潰瘍病変の一部に細網肉腫細胞の混在した稀な症例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

症例

 患 者:出○八○ 44歳 男子

 主 訴:心窩部痛

 既往歴・生活歴:特記すべきことなし.

 現病歴:約12年くらい前から,時々心窩部痛があり,開業医にて胃潰瘍の診断で内科的治療(ソルコセリール20本静注)を受けて症状は一時緩解したが,その後もたびたび症状の再発をくり返し,その都度内科的治療を受けていた.当科入院4カ月前頃から再び心窩部痛を来たし某医院に入院,ソルコセリール80本の注射を受けながら,X線および内視鏡による観察が行われているが,難治のため手術の適応ありとして当科を紹介された.

 現 症:身長174.8cm,体重78.0kg,眼瞼結膜に貧血なく,眼球結膜に黄疸は認められない.左側鎖骨上窩に小指頭大のリンパ節を触知するが,表面平滑で周囲組織との癒着なく癌転移巣とは考え難い,上腹部やや右側に圧痛および抵抗を触れるが,明らかな腫瘤は触知しない.肝および脾は触れない.

 臨床検査所見:末梢液所見:Hb 15.0g/dl,Ht 43%,RBC4 80×104,WBC 5300,血小板 20.2×104,肝機能検査:血清蛋白 7.7g/dl,黄疸指数 3,総ビリルビン 0.3mg/dl(直接ビリルビン 0),s-GOT 42unit,s-GPT 35unit,Alk.Ph. 6.5,LDH 180,塩化コバルト R(3),血清電解質:Na 142mEq/l,K 4.2mEq/l,Ca 5.7mEq/l,Cl 104mEq/l,心電図正常,腎機能正常,胃液検査正酸.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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