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文献詳細

雑誌文献

胃と腸11巻6号

1976年06月発行

文献概要

症例

Polyarteritis nodosaによる空腸穿孔の1例

著者: 堀見忠司1 徳田直彦1 広瀬正明1 額田須賀夫1 小林省二2

所属機関: 1津山中央病院外科 2岡山大学医学部第2病理

ページ範囲:P.781 - P.786

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 われわれは,最近Polyarteritis nodosaの血管性変化により,腸管の壊死・穿孔を来した症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

症例

 患 者:60歳 女

 主 訴:腹痛

 家族歴:特記すべき事項なし.

 既往歴:52歳の時,両側鼠蹊ヘルニアの手術を受けたが,術後,再発したまま放置していた.またその頃より高血圧症の治療を受けている.1974年1月頃より,両上下肢痛のため,某医で多発性神経炎として約2カ月間ステロイド剤(プレドニゾロンにして約600mg)の投与を受け,とう痛は軽減し,ときに訴える程度となったが,皮膚の硬結・発赤などの異常には気づいていない.

 現病歴:1974年8月25日,誘因と考えられるものなく軽度の発熱を伴った下腹部痛を来し,某医により鎮痙剤の投与を受けたが治癒せず,8月27日,外科的疾患として当科に紹介された.

 入院時所見:顔貌は苦悶,浮腫様.体温38℃.眼球結膜には黄疸なく,眼瞼結膜には軽度の貧血を認める.頸部リンパ節は触知せず.全身の皮膚は光沢なく,硬結・発赤などの異常は見られず.また胸部所見でも異常を認めず,下腹部の自発痛は消失し,び漫性の圧痛はある,腸雑音は減弱しているが,筋性防禦やブルンベルグなどの腹膜刺激症状はなし.直腸内指診は異常なし.

 検査成績:心電図(Fig. 1)は,軽度の冠不全を認めるが,特に異常なし.腹部立位単純レ線所見(Fig. 2)では,腸管麻痺を思わせる小腸内ガスうっ滞像をみる.血液検査では白血球増多(17,800/mm3)あり.尿・糞便検査では特に異常なし(Table 1).

 以上の所見より腹膜炎を考えたが,原因が全く不明であるので経過観察・保存的加療を行うことにした.

 入院後経過:腹痛は徐々に増強し,腹部全体に訴えるようになり,白血球増多(18,000/mm3),37℃前後の微熱が続いた.8月30目,突然腹部激痛とともに嘔吐を来し,筋性防禦など汎発性腹膜炎の症状を呈したため,緊急開腹手術を行なった.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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