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雑誌目次

雑誌文献

胃と腸11巻7号

1976年07月発行

雑誌目次

今月の主題 pm胃癌 主題

pm胃癌の病理―早期胃癌と進行胃癌との関連性

著者: 広田映五 ,   下田忠和 ,   佐野量造

ページ範囲:P.837 - P.846

 過去十数年間における胃癌の早期発見早期治療の目覚ましい進歩により,早期胃癌はもちろんのこと比較的初期の進行胃癌も相当多数集積されてきた.これらの資料によって,病理学的に多くの新しい知見,とくに胃癌の組織発生ならびにその進展と蔓延についての研究成果が得られた.病理材料からみてpm胃癌は初期の進行胃癌であり,胃癌の発生進展および蔓延過程の一断面であることは疑いのない事実である.また臨床的にみても術後5年生存率は早期胃癌と進行胃癌の中間に位置するものである1)2).しかし形態学的にみた早期胃癌と進行胃癌との間には多少の断絶がいまだに残っている.たとえばある1つの進行胃癌を見たときに,それがいかなる早期癌の型から由来したものかについては,なお推測の域を脱しない面がある.静的な病理材料からのみこれらの点について解明することは,おのずから限界があり,臨床的逆追跡資料を解析することが重要であると強調されている3)

 いずれにせよ現時点でpm胃癌とはいかなるものであるか臨床病理学的に把握しておくことは重要なことであると思われる.

全国集計からみたpm胃癌

著者: 三輪潔

ページ範囲:P.847 - P.853

 早期胃癌がどのようにして進行胃癌に進展するかということは,病理学者にとっては大変興味ある課題であろうが,臨床家にとっても大変重要な問題である.亡くなられた佐野量造博士は,胃癌の深達度別の頻度を潰瘍型と隆起型に分けて調べた結果,両型ともにmからsに至るまでの頻度が直線的にならなく,pmの癌が手術例でもっとも少ない結果となっていることから,おそらく,m・smの早期癌のうち,その発育が遅くてpmにとどまるものと,早期癌の段階から直ちにssおよびsに浸潤を進める速度の速い癌があることに原因しているものであろうと述べている1).その裏づけとして,pm癌の5年生存率は,ss・sの群よりも,m・smの群に近い数字を示していることを挙げており,pm癌を準早期胃癌と呼ぶことができると提唱している.

 さて,佐野博士のこれらの業績は,すべて国立がんセンターの手術例をもとになされたものであるが,全国集計の結果をこのような観点からみたらどうであろうか.1969年に胃癌研究会が中心となって,全国の主要病院の外科の絶大な協力のもとに,胃癌の全国登録調査が開始されたが,今回は,すでに集計公表された部分2)を中心に,若干印刷中のものも借用させていただいて,ご参考に供したいと思う.

固有筋層に浸潤した胃癌(pm癌)のX線診断に関する2,3の考察(第2報)―とくにⅡc型類似pm癌について

著者: 丸山雅一 ,   杉山憲義 ,   馬場保昌 ,   二宮健 ,   舟田彰 ,   佐々木喬敏 ,   竹腰隆男 ,   高木国夫 ,   中村恭一 ,   熊倉賢二

ページ範囲:P.855 - P.868

 本論文の内容は,われわれが第20回日本消化器内視鏡学会関東地方会におけるシンポジウム「pm胃癌について」で行なった発表内容を骨子にして,それに若干の肉付けを行なったものである.

 固有筋層に浸潤した胃癌(以下pm癌)の診断が臨床的に重要であるのは,この癌の術後の5年生存率(以下5生率)が比較的良好で,進行癌(ss,s)と早期癌(m,sm)の中間に位置するためであろうと思われる.X線診断の立場からすると,pm癌は,①早期癌診断の延長線上にあるものと(早期癌類似pm癌),②従来のBorrmann型分類で診断するもの,の2群に分けられる.②の場合,われわれはX線診断の最初の段階からpm癌とすることはほとんどない.癌の浸潤をもっと深く見積っている.この揚合には予後の問題はともかく所見の規模が大きく多彩である割にはpm癌で運がよかった,というふうにX線診断をふりかえってみる.早期癌との鑑別が必要ないという点で気が楽である.①はちょっと難題である.早期癌類似pm癌の診断には,あくまでも早期癌(m,sm)としての所見の域を出ないものと,早期癌診断の発想に固有筋層以下の癌浸潤の量的要素を加味したものの2つがあると仮定しよう.前者の場合,粘膜内癌に類似のX線所見を呈するもの(m癌)をその代表とすると,これは癌の構築を大まかに2次元的なものとして把らえることができる.ところが,後者の場合にはこの2次元的構築に加えて,癌の深部への進展を量的に把握する方法をX線所見上に求めなければならない.いい方を変えれば,癌の深部への進展の最先端を「深達度」として把らえるのではなく,癌およびその近傍をふくめた病変の浸潤様式(invasion pattern)21)として把えることが必要である.

pm胃癌と内視鏡診断

著者: 小黒八七郎 ,   崎田隆夫

ページ範囲:P.869 - P.875

 早期胃癌に関する諸問題がほとんど解明されている今日,早期胃癌よりも癌浸潤がさらに一段階深部に進み固有筋層まで到達した胃癌(以下pm胃癌と呼ぶ)が最近注目されている.その理由は早期胃癌よりもさらに詳細な深達度診断の追究,進行胃癌の術後の予後の改善,そして,病理学的に早期胃癌から進行胃癌への進展の解明などの諸問題において,pm胃癌が重要な位置を占めているからである.これらの問題は互に密接な関連があり,その1つの研究は他の問題の解決の手がかりを与えるであろう.われわれは,かかる見地から,第20回日本消化器内視鏡学会関東地方会(1975年6月)において,pm胃癌の臨床とくに内視鏡診断を中心として,シンポジウムに採用し,pm胃癌の諸問題の解明を試みた.以下,国立がんセンターにおけるpm胃癌成績を中心として考察を行なった.

pm胃癌の臨床―当院における統計と病理

著者: 山田栄吉 ,   紀藤毅

ページ範囲:P.877 - P.884

 進行癌ばかりで早期胃癌ともなればはなはだ少ない経験しかなかった筆者は,早期胃癌の手術例が増加するとともに漸くその実態を知るようになったのは,愛知県がんセンターが開設されて1,2年後の頃である.同時にまた病理組織学的検索の結果,癌浸潤がわずかながら既に粘膜下層を貫いて固有筋層にみられたため,早期胃癌の範疇を逸脱して失格するいわば準早期胃癌の症例にもしばしば遭遇するようになった.1968年に入ってこれら失格例を含めてpm癌を検討すると,pm癌はたとえそれが小さい胃癌であっても,長径が2cmをこえるとリンパ節転移はもとより病理組織学的に配列違型度・浸潤度など,癌進展の様相は早期胃癌と比べ大いに趣きが異ることに注目した.また症例を重ねるに従い,術後経過の様相も漸次明らかになって,早期胃癌・pm癌などまだ癌浸潤が漿膜に及ばない症例では,その予後を支配する重要な因子は血行性転移殊に肝転移であることを知って,筆者はpm癌に対する一層の関心をもった.胃癌診断の技術が進歩し普及するに従って,早期胃癌・pm癌など予後の良い手術症例が漸次増加するであろう折柄,これらの問題は今後われわれ臨床外科医にとってはなはだ大切であると考えた.1973年紀藤は当院臨床検査部の協力を得てpm癌症例を改めて連続切片で検索し検討した.その結果は数回に亘って学会または誌上に報告したが,このたび編者から標題にみるような課題が与えられたので,愛知県がんセンター病院外科第3部で経験した10年間のpm癌症例の大要を報告しようと思う.

座談会

pm胃癌について

著者: 城所仂 ,   副島一彦 ,   増田久之 ,   広田映五 ,   崎田隆夫

ページ範囲:P.886 - P.899

 崎田(司会) 今日はお忙しいところ遠くよりお集まりいただきましてありがとうございます.

 本日のテーマは「pm胃癌」です.これの企画には佐野先生が非常に関係をしていらっしゃったのでございますが,最近お亡くなりになりました.本日は広田先生が出席しておられます.座談会を始めます前に佐野先生のご冥福をまずお祈りしたいと存じます.

症例

胃Lymphoreticular Hyperplasia(diffuse,flat form)の1例

著者: 北村浩 ,   山下清章 ,   木村文聰 ,   中井隼雄

ページ範囲:P.901 - P.908

 胃リンパ細網細胞増殖症についてはKonjetzny(1928)8)が慢性胃炎特殊型として記載以来,その本態と組織診断基準に関し多くの報告があり1)~13),現在なお病理組織学的にも不明の一疾患単位として統一的には理解されていない.また,悪性リンパ腫との鑑別については病理組織水準においても両者の鑑別の困難な症例があり,そのような報告が少なくない.

 われわれは臨床諸検査の段階で悪性リンパ腫と診断し,組織学的にLymphoreticular hyperplasiaを主体とした病変中に散在性あるいは小集簇性に細網細胞の異常増生を認め早期細網肉腫への移行を強く疑わせる症例を経験した.

巨大な十二指腸平滑筋肉腫の1例とその文献的考察

著者: 二村雄次 ,   服部龍夫 ,   三浦馥 ,   家田浩男 ,   七野滋彦 ,   佐藤太一郎 ,   早川直和 ,   船橋重喜 ,   宮本修 ,   中江良之 ,   松野丞男 ,   加藤政司 ,   山本義樹 ,   野田愛司 ,   中沢三郎 ,   中島伸夫

ページ範囲:P.909 - P.916

 十二指腸のX線診断の発達と内視鏡検査の普及により,十二指腸腫瘍の報告例は近年増加してきている.最近われわれは,十二指腸および膵頭部を占拠した巨大な十二指腸平滑筋肉腫の1例を経験したので報告する.

研究

外科病理よりみたpm胃癌

著者: 安井昭 ,   三宅政房 ,   一瀬裕 ,   平瀬吉成 ,   石橋千昭 ,   吉田光宏 ,   城所仂 ,   村上忠重

ページ範囲:P.917 - P.926

 人胃癌の発生は特殊なものを除けば胃粘膜内で行なわれることには議論の余地はない.そして粘膜内にあっても,潰瘍やびらんに直接して発生したものを除けば,粘膜の表面に近い浅い層で行なわれること(Konjetzny2),Büchner6),村上5))もほぼ確かである.

 このようにして発生した胃癌が,さらにどのような経過を辿って,私どもの目に映るような胃癌の大きさにまで進行するものかは,これまであまり深く考察されていない.ただ慢然と,一点ないしは比較的狭い範囲のある面を中心として,波紋や音波がひろがるように同心円的に拡大するものだという風に考えられがちである.

実験胃癌の発育進展―イヌ実験胃癌の発生過程の追求(Ⅲ)

著者: 斎藤貴生 ,   玉田隆一郎 ,   佐々木攻 ,   副島一彦 ,   井口潔 ,   平野雅士

ページ範囲:P.927 - P.934

 N-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(MNNG)の投与によって,No. 3のイヌに発生した陥凹型胃癌について,その胃癌発生にいたるまでの経過ならびに初期の胃癌の発育状況を前報で述べた1).ここでは,この胃癌のその後における発育進展の状態ならびに終末像について供覧する.

学会印象記

日本消化器病学会第62回総会印象記

著者: 竹本忠良 ,   西村秀男 ,   原田善雄

ページ範囲:P.935 - P.937

 わが雑誌「胃と腸」もいよいよ「胃と腸」にたくましく成長しようとしている.そういう時期を考慮して,この学会印象記も思いきって消化器学の全領域を短文の制約はいかんともしがたいが,できるだけカバーすべく努力してみた.それには1人では無理である.会場も方々に分散している.シンポジウム,特別講演が中心となる記事とわかっていても,はじめから3人で分担することにした.

 第62回日本消化器病学会総会(会長:石川浩一東大第1外科教授)は1976年3月29日より3日間国立教育会館をmainとした4会場で開催された.天候にもめぐまれず,30日は交通ストとぶつかるという不運はあったが,特別講演2題シンポジウム3題,パネル・ディスカッション1題,それに一般演題が375題と内容豊かな学会であった.

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欧文目次

ページ範囲:P.835 - P.836

書評「胃―その形態と機能―」

著者: 岡部治弥

ページ範囲:P.846 - P.846

 本書のユニークさについてはすでに藤田晢也教授による序,編者川井教授による自序により,きわめて簡潔明快にしめされている.それをここにしめせば,さらに書評の駄文は必要とせぬが,年来の畏友川井教授より是非と依頼されたので,敢えて駄足を加えてみたい.この10年来,胃診断学に関する新刊書はまさに踵を接して出版されてきたと申しても誇張ではあるまい.その幾つかはそれぞれX線,内視鏡,病理学の分野で名著としての確固たる地位を斯界に誇っている.それらは高度なレベルにある胃診断技術の良き指導書として数多くの消化器病の臨床にたづさわる医師を育成してきた.本書の編者やその同門の執筆者もその多くは,またこの胃診断学の発展に大いに寄与しかつ彼等自身で新しい診断技術を開発して来た人達である.これらの人々によって成った本書の特徴は,そのすぐれた診断技術と知識を基盤として,しかし焦点を形態学的異常と機能との関連性にしぼり,その焦点に広い角度から分析を加えている点であろう.従来,このような視点から1冊にまとめられた本はない.本邦の消化器病学はその形態学的診断学は他国の追随を許さぬが,その病態生理学的研究のレベルは欧米の後塵を拝しているといわれ,かつ痛感して久しい.確実かつ早期の診断即現時点における唯一無二の治療である胃癌に関しては形態学的診断学の進歩は不可欠であり,本邦におけるその業績は輝やかしい.しかしその底辺に膨大な数をしめている消化管の機能異常を主とする,または伴う疾患については,その形態学的異常と共に病態生理,病態生化学の理解なくしては最良の治療は行なえるものではない.その機能面の追究は診断学よりもむしろ治療学に密接につながるものであろう.医学における最終の目的は予防をふくめて治療学の完成である.形態と機能の相関に焦点をあてた本書の存在意義はこの点からも大変大きい.その内容は川井教授がかつて属していた伝統ある消化器教室の中で先輩,同僚および後輩の共同研究者と共につみ重ねて来た研究の成績が随所に紹介されており,前々から,この観点にたった研究をすすめてきたことがよくわかる.そのテーマの正鵠を得ていることに敬意を表し,それを見事に開花させている多くの研究者のチームワークに心から祝福を送りたい.このユニークな本書の一読を推める所以である.新しい教室を開いた川井教授の発展と共に本書がますます完成されてゆくことを心から期待している.

書評「The Small Intestine (Tutorials in Postgraduate Medicine Vol. 4)」

著者: 原田尚

ページ範囲:P.926 - P.926

 本書はWilliam Heinemann Med. Books Ltd.の卒後教育叢書の第4冊である.

 編者のBrian CreamerはLondonのSt. Thomas医学校の講師で,Creamer自身を含む14名の内・外・放射線・小児科の専門医によって分担執筆されている.

海外文献紹介「胆石溶解を目的としたChenodeoxycholic Acid治療の特性と効果について」

著者: 鶴原一郎

ページ範囲:P.854 - P.854

Efficacy and Specificity of Chenodeoxycholic Acid Therapy for Dissolving Gallstones: Johnson L. Thistle, M. D. and Alan F. Hofmann, M. D.(N Engl J Med 289: 655~659, 1973)

 無症候性Radiolucentgallstoneを認める患者に,Chenodeoxycholic Acid(以下CDOCAとする)とCholic Acid(以下CAとする)とplaceboとを投与し胆石溶解の効果を検討し,あわせてRadiopaquegallstoneを認める患者にCDOCAを投与し同様な検討を行なった.

 Radiolucent胆石患者53例,Radiopaque患者13例を対象とした.53例中18例にCDOCAを,17例にCAを,18例にplaceboを投与した.投与方法は各々の薬剤を125mgないしは250mgのゼラチンカプセルに作製し,最初の1カ月間は1日750mg投与,1カ月後は下痢症状を認めるまで増量した.Radiolucent群の平均投与量は18mg/kg/day,Radiopaque群の投与量は20mg/kg/dayであった.観察期間は6カ月間としたが,Radiolucent群のうち7例に関しては2~3年間CDOCAを投与し結果を観察した.

海外文献紹介「萎縮性胃炎とその経過―19~23年の経過追跡の成績について」

著者: 小林世美

ページ範囲:P.900 - P.900

Atrophic Gastritis and Its Sequelae―Results of 19~23 Years' Follow-up Examinations: M. Siurala, J. Lehtola and T. Inamki(Scand. J. Gastroent. 9: 441~446, 1974)

 著者らは,過去に度々萎縮性胃炎の経過について発表し,癌の発生について触れている.最初は1950年から1954年の間に胃X線検査,内視鏡検査,胃生検,ヒスタミン試験等を行ない,胃癌,胃潰瘍,ポリープ,悪性貧血等を除外できた116例の萎縮性胃炎を対象とした.第1回の経過観察は,1960年,第2回は1965年,今回は1973年と計3回の経過が追跡されている.平均経過観察期間は21年であった.116人のうち34人は,1965年の観察時までに死亡,82人が1973年の観察のため残っていたが,そのうち28人は1965年から1973年までの間に亡くなった.主なものは,胃癌が2人,肺癌2人,卵巣癌1人,結腸癌1人,脳腫瘍1人,原発不明腹部腫瘍1人,心臓血管系疾患15人,その他5人で,1973年1月の生存者は54人,うち36人が検査をうけた.先回のFollow-upで9人の胃癌患者が出,今回1人が加わって,合計10人の胃癌が発生したことになる.新症例は58歳男子.1952年の最初の検査では生検組織で,軽度ないし中等度の萎縮性胃炎で,軽度ないし中等度の上皮異型を伴っていた.1960年の検査を拒否し,1972年X線検査で幽門前庭部から体部まで侵した胃癌を発見.手術標本では腸上皮化生と幽門腺に囲まれた高分化型腺癌で,転移のため1972年に死亡した.その他,ポリープ性病変が前回2例見つかったが,今回は6例,うち腺腫2例,過形成性ポリープ2例,そして軽度の異型を伴った炎症性変化が2例であった.前回の経過観察で発見された胃癌の全例において萎縮性胃炎が先行していた.今回のFollow-upの期間に胃癌で死亡した2例中1例は前回発見された例で,新たに1例が加わった.著者らの最終検査時,萎縮性胃炎は一般に幽門前庭部より体部に強く,Kimuraらの結果と異なっていた.胃癌の局在はおおよそ胃炎の局所解剖に一致し,噴門部に2例,体部または境界領域に4例,幽門前庭部に2例,他は胃全体にび漫性におこっていた.多くはLaurenのIntestinal typeの胃癌で,異型上皮からおこったと考えられる.

海外文献紹介「進行胃癌における姑息切除の評価」

著者: 小林世美

ページ範囲:P.900 - P.900

Evaluation of Palliative Resection in Advanced Carcinoma of the Stomach: J. L. Stern, S. Denman, E. G. Elias, M. Didolkar and E. D. Holyoke(Surgery 77: 291~298, 1975)

 アメリカでは,診断の遅れと誤診等の理由で進行胃癌が多い.この研究は,このような進行胃癌に施行される治療のうちで,姑息的切除が,非治癒胃癌患者での延命に大いに寄与することを示している.

 対象例はまずTNMのStageで分類された.姑息切除の延命効果を知るためなので,特に進行しているStage ⅢとⅣの群を主に取扱った.このシリーズ中140例の胃癌での5年生存率は,わずか7例,5%で全例切除例であった.切除例の平均生存月数は,Stage Ⅰ,31.7カ月,Stage Ⅱ,41カ月,Stage Ⅲは,姑息切除19.4カ月,非切除例では7カ月,Stage Ⅳは,姑息切除で15.5カ月,非切除例では5.6カ月だった.Stage ⅢとⅣの間に有意差はないが,切除群と非切除群間には有意の差を認めた.

編集後記

著者: 城所仂

ページ範囲:P.938 - P.938

 本号はpm胃癌の特集号である.早期胃癌より一歩進んだ癌であり,末期癌との中間的な位置をしめる癌として癌の進展様式を検討するのに大変重要な位置をしめるものである.

 pm胃癌については早くから興味がもたれていたが,十分な数が集積出来ないまま今日に及んでいた.早期胃癌の数も増し,pm胃癌の数もそれにつれて増加している今日,この主題を取り上げることになったのはまことに時機を得たものと思う.

基本情報

胃と腸

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1219

印刷版ISSN 0536-2180

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