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文献詳細

雑誌文献

胃と腸11巻8号

1976年08月発行

文献概要

症例

胃放線菌症―胃から横行結腸に及んだ放線菌症の1例を中心に

著者: 藤田昌宏1 高橋達郎2 下田晶久2 荻田征美3 市川健寛3 氏家忠4

所属機関: 1国立札幌病院病理 2旭川医科大学第1病理 3国立札幌病院外科 4氏家胃腸科医院

ページ範囲:P.1049 - P.1054

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 放線菌症(Actinomycosis)は1)2),慢性の化膿性または肉芽腫性疾患で,多発性膿瘍形成,肉芽組織,線維性瘢痕,特有のsulfur granule(Druse)などを特徴としている.発生する部位により,①顔頸部,②胸部,③腹部放線菌症などにわけられる.これらの発生頻度は,1)60%,2)20%,3)20%といわれ,Cope(1938)2)も1)56.8%,2)15%,3)22.3%,4)その他5.9%と顔頸部にはじまるものがもっとも多い.美甘(1957)3)は1)67%,2)8.9%,3)18.6%,4)その他5.3%と同様の報告をしているが近年,Brown(1973)4)は,181例の放線菌症中,頭頸部63,胸部59,腹部51,その他8の統計を述べている.腹腔内臓器侵襲の放線菌症は非常にまれでWilson(1962)5)は,40年間に16例を経験したにすぎないと報告している.

 腹部放線菌症は一般には,急性虫垂炎や消化性潰瘍,腸憩室穿孔や外傷のあと数週ないし数カ月の経過で著明となることが多く,腹腔内膿瘍形成を認める.1945年Putman6)は,35年間に122例の腹腔内および消化管原発の放線菌症を検討し,103例が消化管の急性化膿性または穿孔性病巣のため外科処置を受け,88例は発病時穿孔性急性虫垂炎の症状を呈し,既往歴に急性症状の欠如するものは7例であったと述べている.ごくまれに内臓放線菌症がおこり,中でも胃原発の放線菌症は少なく,世界の報告例もごくわずかである.1929年Nathan7)は文献的に胃の原発性放線菌症として6例のみがあげられるとして,1)Israel(1889),2)Prutz(1899),3)Grill(年不明),4)Brunner(1907),5)Pohl(1912),6)Hadjipetros(1920)をかかげているが,Blain(1933)8)は6例中Hadjipetrosの例のみが諸検査において完全な胃原発性であると述べている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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