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文献詳細

雑誌文献

胃と腸11巻9号

1976年09月発行

文献概要

早期胃癌肉眼分類の再検討を読んで

著者: 大森幸夫1

所属機関: 1千葉県がんセンター消化器科

ページ範囲:P.1182 - P.1182

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 早期胃癌の肉眼分類の再検討にあたり1962年に提唱されて今日に至っているⅠ型,Ⅱ型,Ⅲ型という分類の基本的な原則は変更しないという委員諸先生のお考えには私も賛成致します.また,この肉眼分類に限って早期胃癌であるという診断根拠のために組織学的判定の導入されることは当然であろうと思います.次に個々の細かい問題点につき若干ふれてみます.ある系統的な病変を分類整理する時,極めて現象論的に分類する場合と,逆に発生論的立場で分類する場合とがあると思います.前者の立場にたてば病変の客観的チェックは比較的容易のように思われ,また後者に従えば病変のbehavior等を考慮した分類も可能と考えられます.しかし,形態学的な分類にできるだけ客観性と普遍性とを持たせようとする場合,病変の成り立ち,behavior等の因子を余りに多く導入すると,本来の目的と相反することが屡々のように感ぜられます.このことは,胃癌研究会で先年,胃癌の組織学的分類の改訂を行なった際,その検討の過程で痛切に感じたものです.それで,実際の検討に移りますが,私はこの早期胃癌の肉眼分類においても,より目立つ方(胃癌の新しい組織学的分類で採用した優勢像に準ずる)を前に出すという基本的な考え方が大切であると思います.したがってⅡa+Ⅱcや,Ⅱc+Ⅱaの場合,環状であるか否かというより,単純にⅡaなりⅡcの広さで考慮した方がすっきりすると思います.組織発生やbehaviorまで考慮すると客観的にチェックできる分類は益々難しくならないでしょうか.陥凹型のⅡc+Ⅲに関してはⅢの明確な規定から始まるのでないでしょうか.1962年提唱されたⅢ型のシェーマでは潰瘍縁に小範囲の癌がみられるのみで,そこにはⅡc様の平坦陥凹の指摘はされておりません.かりに極く小範囲のⅡcが潰瘍縁にあっても,これらはⅢ型であると思います(所謂二重輪郭像).そうなると,一定の広さを持つⅡcのなかに潰瘍がみられるものをⅡc+Ⅲとすることには何か抵抗が出て参ります.このような場合は,ただⅡcのなかにulcerationがあるというふうに(例えばⅡc(ul),またはⅡc(uls))表現できるのでないでしょうか.組織を切ってみて潰瘍があるかどうかということに余りこだわる必要はなさそうに思います.また,Ⅲ(ul)という表現にも何か納得できないものを感じます.紙数の関係で具体的な見解はこれにとどめます.ただ,これはあくまでも早期胃癌の肉眼分類であって,そして客観的に多くの人が分類しても一致率の高まるようなものを御検討願いたいと思います.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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