今月の主題 症例・研究特集
症例
胃のBizarre Leiomyoblastomaの1例
著者:
小坂井守1
安田寛基1
山口宜伸2
岩倉集2
島田孝3
山口明志4
所属機関:
1帝京大学医学部第2病理学教室
2日本大学医学部第2外科教室
3志村橋外科病院
4山口内科病院
ページ範囲:P.1339 - P.1344
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胃にみられる非上皮性悪性腫瘍には,悪性リンパ腫がその約半数を占め,次いで平滑筋肉腫が多いといわれる.1962年,A. P. Stout1)は,胃に発生した平滑筋腫瘍を検討し,その中で臨床的に良性経過をたどり,組織学的には腫瘍細胞が非常にbizarreな形態を呈するものを選んだ.これらの腫瘍は,従来neurogenous tumor,vascular tumorなどの範疇に入れられていたものであるが,これをBizarre Leiomyoblastomaと名付け,その組織学的特徴を述べた.本邦では,1965年に久保らが3例の同症例を報告2)して以来,第62回日本病理学会で田中らが発表した5例を含めても20例に足りない.今回,われわれは,26歳という若年の男性例を経験したので,組織学的特徴および電顕的所見を中心として,文献的検討も加え報告する.
症例
患 者:26歳 男性 事務員
既往歴・家族歴:特記すべきことなし
主 訴:空腹時の心窩部重圧感と嘔気
現病歴・入院時所見:1976年2月に主訴が増強したため来院.痩身だが,結膜の貧血などはない.また,主な臨床検査成績は,赤血球495×1044白血球8,200,HB95%,血圧120~80であった.