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文献詳細

雑誌文献

胃と腸12巻5号

1977年05月発行

文献概要

研究

LAP(Leucine aminopeptidase)を指標とする胃粘膜腸上皮化生のパターン

著者: 中原國廣1

所属機関: 1国立病院九州がんセンター消化器部外科

ページ範囲:P.671 - P.679

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 胃粘膜上皮化生は,胃・十二指腸病変,特に胃癌との関連において重要視1)~9)40)41)されてきた.腸上皮化生の胃粘膜面における分布状態やその程度を肉眼的に観察する方法として,臨床的には胃内視鏡検査と色素撒布等の併用による方法10)~15)があり,実験的には切除胃標本を対象とする方法16)~23)がある.特に後者には,近年,酵素組織化学的アプローチが導入され,胃癌発生の機序を解明するための1つの重要なアプローチとして,欧米や本邦でも2,3の研究が報告されてきた.このようなアプローチとして今日まで知られている主なものは,Alkaline phosphatase(ALP)を指標とする方法16)17)20)21),Disaccharidasesを指標とする“Tes-Tape”法18)19)24),杯細胞産生mucinとAlcian blueとの親和性を利用する方法等21)がある.従来,ALPは腸上皮化生に強い特異性があり,安定した酵素と考えられてきたが,著者26)は,先にALPを指標として,腸上皮化生の分布状態を観察し,その結果が病理組織学的腸上皮化生の分布との間に必ずしも一致しない場合が存在することを知った.このため,腸上皮化生の代表的指標酵素の1つであるLeucine aminopeptidase(LAP)の酵素反応を利用して,腸上皮化生に特異的な呈色反応をおこさせ,腸上皮化生の胃粘膜面における分布状態やその程度を肉眼的に観察する方法を考案した.この反応陽性粘膜は,橙赤色を呈し病理組織学的に検索された腸上皮化生の分布とよく一致し,さらにALP染色法を重ねて行なえるので,酵素パターンの異なる腸上皮化生の存在やその分布状態を観察することができた.著者はこの方法を便宜上LAP染色法と呼んでいるが,反応は鋭敏で操作が簡便であり,標本をいためることがないので便利な研究方法である.以下LAPを指標とする腸上皮化生(以下化生と省略)の観察法を述べこの方法によって観察された化生について若干の検討を加えてみたい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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