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文献詳細

雑誌文献

胃と腸13巻1号

1978年01月発行

今月の主題 胃癌の発育経過

主題症例 A.胃癌の発育経過(形態の変化を中心として) 2)陥凹型胃癌の発育経過

Case 8 隆起型早期胃癌より中間型早期胃癌に進展したと考えられる症例

著者: 竹添和英1

所属機関: 1青山病院外科

ページ範囲:P.24 - P.25

文献概要

 患 者:大○次○ 65歳 男

 吐血を主訴として来院,内視鏡検査で胃体下部後壁寄りの潰瘍よりの出血と診断された.この際,幽門前庭部大彎側に軽い発赤を伴う小結節状凹凸を呈する病変の存在には気づかなかった(Fig. 1).10カ月後に潰瘍は内視鏡的に治癒が観察された.このときにもやはり前記病変は見逃された.初回から2年後に上腹部鈍痛のため来院し,内視鏡検査の結果潰瘍の再発が証明されたが,このとき初めて前庭部の病変に気づいた.すなわち隆起性病変は著しく増大して,ドーナツ状を呈し,表面の凹凸が明瞭となっている.わずかに発赤を示し,一部浅い陥凹を呈する.ヒダの集中はない.容易にⅡa+Ⅱcと診断できる.手術をすすめたが,本人の同意が得られず,さらに9カ月経過することになった,そして初回から2年9カ月後にようやく手術されることになった.その直前の写真がFig. 3である.隆起は一層その高さと大きさを増し,同時に内部の陥凹も深くなり,淡い付着もみられる.ヒダの集中はないが,やや伸展性の制限をうかがわせる像である.切除胃写真(Fig. 4)にみるように病変は粘膜ヒダの集中を伴わないⅡa+Ⅱcである.病巣のほぼ真中を通る切片のルーペ像がFig. 5aであるが,マークした癌浸潤範囲のうち,左約1/2は中分化型腺管腺癌であり,一部で粘膜筋板を間隙性に粘膜下層への侵入がみられる.軽い線維化を伴っている(Fig. 5b).右約1/2は低分化型腺癌の像を示し,ほぼ全面で粘膜筋板を圧排性に破壊して粘膜下層に浸潤を始めている(Fig. 5c).潰瘍形成は証明されない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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