icon fsr

文献詳細

雑誌文献

胃と腸13巻10号

1978年10月発行

文献概要

今月の主題 胃・十二指腸 併存潰瘍 主題

切除標本からみた併存潰瘍

著者: 安井昭13 石井淳一2 片岡徹2 城所仂3 村上忠重4

所属機関: 1越谷市立病院外科 2昭和大学外科 3順天堂大学消化器外科 4東京医科歯科大学第1外科

ページ範囲:P.1347 - P.1356

文献購入ページに移動
 胃・十二指腸併存潰瘍(十二指腸潰瘍)の切除は癒着の程度の強弱によってしばしば困難な場合があり,しばらく前まではFinstererの曠置手術(十二指腸潰瘍はそのまま残し幽門部で胃を切断し,断端はそのまま縫合閉鎖してBillroth Ⅱ法の胃空腸吻合をする)が一般的であった.この方法は十二指腸潰瘍の病巣部を胃液や食物などに直接さらされなくなるから潰瘍が自然治癒するであろう,という発想からこのような手術法がしばしば行われていた.したがって十二指腸潰瘍でありながら十二指腸のついていない切除胃標本がしばしば採取されていた.そこで以下に使用した材料の蒐集をわれわれ自身の関係した教室のみの胃切除材料としたのは,原則として十二指腸に多少の癒着はあっても十二指腸を十分に剥離し潰瘍は完全に胃につけて切除する.そしてなるべくBillroth Ⅰ法の胃十二指腸吻合を行う(生理的に近い状態)という方針をとっているので,その切除標本の集計のほうが信用できると考えたからである.しかしこれらの症例はいずれも外科的に切除された材料であるので,内科的な十分な経過観察を行った症例とはある程度の差のある恐れがあることを断っておきたい.

 さて,われわれの関係教室(昭和大学外科)で経験した十二指腸潰瘍の病理所見については,1961年に岩堀1)が,また1965年に村上ら2)が,それぞれの期間の統計的観察を行い報告している.当時対象とした十二指腸潰瘍は,単独例98例,併存例61例計159例である.当時の統計によると十二指腸潰瘍の病理学的な傾向にはほとんど差異がないと報告されている.しかしわれわれがいつも心にとめていたものに単独十二指腸潰瘍と平行して,それより数の少ない胃潰瘍との併存十二指腸潰瘍を経験することである.病理学的な詳細な検索をすればするほどその数は増してくる.両者間に何らかの病理学的,あるいは臨床的な差異があるのではなかろうかという点で常にわれわれの脳裏にこびりついていた.しかし3種(胃潰瘍,十二指腸潰瘍,胃・十二指腸併存潰瘍)の消化性潰瘍のうちで,この併存十二指腸潰瘍は数がもっとも少なく,統計観察を行うのに不十分であったので,われわれ3)は1967年に単独十二指腸潰瘍57例,併存十二指腸潰瘍49例計106例について,前回と同様の統計的観察を試み2~3の知見を得ているが,今回はそれらの症例にその後採取された症例および順天堂大学消化器外科で切除された症例を加え統計的観察を行ったので報告する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?