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文献詳細

雑誌文献

胃と腸13巻2号

1978年02月発行

文献概要

今月の主題 急性胃潰瘍とその周辺 主題

急性胃潰瘍をめぐる2,3の問題点(序にかえて)

著者: 竹本忠良1

所属機関: 1山口大学第1内科

ページ範囲:P.165 - P.168

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はじめに

 誰でも知っているように,潰瘍ulcerという言葉の病理学的定義はあまりにも明確である,と同時に,びらんerosionの概念も疑問をはさむ余地はまったくない.

 ところで臨床ではどうであろうか.とくに急性胃潰瘍,急性胃十二指腸潰瘍あるいはストレス潰瘍あるいは急性びらん,出血性びらん,出血性胃炎,胃炎出血などの用語がずいぶんふるくからかなり無雑作に通用している.ストレス潰瘍という用語などはむしろ通俗化しすぎているきらいさえあることも多くの人が否定しえないところであろう.

 Los AngelesのP. H. Guth(1973)1)が書いたGastroenterologyのeditorialを読むと,「医学文献にあまりにも何げなく“潰瘍”という言葉を使いすぎることが,語義に関しても,科学的にも混乱を起こす結果になっている」と書きはじめている.

 たとえば,今日上部消化管出血に対する緊急内視鏡検査が普及しており,また普及したことによって,この「胃と腸」の特集テーマがクローズアップされたわけでもあるが,慢性胃潰瘍からの出血と,わが国でいう急性胃病変,acute gastric mucosal lesions(AGML)からの出血とを厳密に区別することが重要になっていることはKatzら2)の指摘をまつまでもない.

 ところが,Ul-ⅡあるいはUl-Ⅲのような潰瘍では日常診療の場では急性潰瘍とも慢性潰瘍ともそれほどclear cutに判断することが容易ではない.周辺反応の乏しい浅い潰瘍を急性潰瘍と簡単に診断してよいのだろうか.

 またUl-ⅠとUl-Ⅱとが臨床の場でそれほど明確に区別できるものとは思われない.まだまだわれわれの現在の消化器診断学のもっている蓄積の程度では,こうした根本的な重要問題の診断すらおぼつかない点が多いと言わざるを得ない.

 とにかく,あまりにかかえている問題が多いこと,しかも深刻であることを十分承知しながらも,わが「胃と腸」はこのたびあえてこの難しいテーマに取り組んでみることにふみきったわけである.

 最初,編集委員会では8巻1号の「急性胃病変の臨床」がたいへん好評であったことをふまえて,「ふたたび急性胃病変をめぐって」という主題名が提案されたのであるが,いろいろ考慮のすえ,あえて「急性胃潰瘍とその周辺」という主題名にしぼって,急性胃潰瘍とはなにか,それをいかにして急性潰瘍と診断するか,また治療の特異性はどこにあるのかなどについて,現時点の臨床病理学,診断学の総力を結集したものにまとめようと期待したわけである.また成因論についても期待が大きい.

 たいへん「まえがき」から長くなったが,この特集号を企画するにあたってのねらいをもうすこしはっきりさせておきたい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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