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今月の主題 クローン病(2) 主題
スウェーデンのクローン病との比較―Malmö総合病院におけるクローン病の実態
著者: 丸山雅一1
所属機関: 1癌研究会付属病院内科
ページ範囲:P.527 - P.536
文献購入ページに移動 「日本のクローン病とスウェーデンのクローン病の比較」というのが私に与えられたテーマであるが,実をいうと,原稿の依頼を受けてから締切り日を過ぎてしまうまで,あれこれ考えた末,やっと書いてみたのが本文である.というのは,私は,スウェーデンのクローン病の事情に精通しているわけでもないし,また,自分自身が経験したものでもない資料をもとに文章をひねりだすというのがどうも私の性に合わないこともあって,なかなか書きはじめることができなかったのである.そんなわけで,本文の内容は私自身がスウェーデンのMalmö総合病院で見聞したクローン病の印象に,この病院のDr. C. LindströmおよびDr. L. Wehlinから提供してもらった材料を加えて書いた随筆風の紹介文になってしまうことをお許し願いたいと思う.
大腸の炎症性疾患に私が興味を持ちはじめるきっかけは,白壁16)の「腸結核」(腹部レ線写真読影講座,第6集)を読んだときである.自分の力でこの本の壁を突き破るのは至難のことだなとそのときつくづく思ったものである.とはいうものの,私は,癌が圧倒的に多い癌研という病院の特殊な環境のなかで,腸結核の診断に挑戦し続けた.1974年22),『胃と腸』9巻7号に書いた「回盲部結核症のX線診断」は白壁の「腸結核」に挑戦し続けていることの証しであると同時に,それまでの成果をまとめた中間報告のつもりであった.クローン病に対する関心も実は,この論文の前後に自然発生的に生じてきたものである.腸結核の組織標本をながめていると診断をクローン病としても何の矛盾もないような気がしてくるし,さりとて,肉眼所見やX線所見からみればクローン病では決してありえないような病変というのが当時の印象であった.また,そういう迷いの目で学会や誌上で発表されるクローン病と診断されている症例をみると,逆に,結核の診断ではどうしてだめなんだろうという疑問も強く頭にこびりついていた.
大腸の炎症性疾患に私が興味を持ちはじめるきっかけは,白壁16)の「腸結核」(腹部レ線写真読影講座,第6集)を読んだときである.自分の力でこの本の壁を突き破るのは至難のことだなとそのときつくづく思ったものである.とはいうものの,私は,癌が圧倒的に多い癌研という病院の特殊な環境のなかで,腸結核の診断に挑戦し続けた.1974年22),『胃と腸』9巻7号に書いた「回盲部結核症のX線診断」は白壁の「腸結核」に挑戦し続けていることの証しであると同時に,それまでの成果をまとめた中間報告のつもりであった.クローン病に対する関心も実は,この論文の前後に自然発生的に生じてきたものである.腸結核の組織標本をながめていると診断をクローン病としても何の矛盾もないような気がしてくるし,さりとて,肉眼所見やX線所見からみればクローン病では決してありえないような病変というのが当時の印象であった.また,そういう迷いの目で学会や誌上で発表されるクローン病と診断されている症例をみると,逆に,結核の診断ではどうしてだめなんだろうという疑問も強く頭にこびりついていた.
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