研究
大腸粘膜のX線拡大撮影
著者:
下田悠一郎1
松浦啓一1
武田儀之1
中山卓1
北川晋二1
西原春實1
中田新一郎2
石橋龍人3
古賀充4
清成秀康4
稲倉正孝5
所属機関:
1九州大学医学部放射線科
2松山赤十字病院放射線科
3九州厚生年金病院放射線科
4九州がんセンター放射線科
5宮崎医科大学放射線科
ページ範囲:P.663 - P.674
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大腸粘膜表面に解剖学上無名の溝(innominate grooves)があることを指摘し,それがX線像上にnetwork pattern,spiculationおよびdotted patternとして現われることがあるのを最初に報告したのはWilliams1)である.しかし事実の指摘に終わり診断的意味づけは行われていない.ついで狩谷ら2)3)は実体顕微鏡,切除大腸の二重造影像にてこのnetwork patternがX線像における表現可能な最小単位で大腸二重造影像の基本像であり,炎症性疾患,ことに潰瘍性大腸炎のX線所見による治癒判定には欠くことのできぬものであることを指摘した.われわれはより微細なX線像を得ることを目的にして1972年より微小管球を用いて切除大腸の拡大撮影を行い,このnetwork patternの微細構造の詳細な検討を行い報告してきた4)5).またこれと並行して拡大撮影の臨床への応用も行ってきた6).本稿では臨床の場における拡大撮影による大腸粘膜の微細診断の意義について述べる.
研究方法および目的
大腸X線拡大撮影に使用した装置は主として目立メディコ製日立TRD-VI-E(Fig. 1)である.天板を支える腕をバランスの許す限り長くしてある.二管球方式であり拡大撮影に切り替えると微小焦点管球が透視時の焦点と入れかわりながら自動的に天板焦点問の距離を縮め拡大率をあげるようになっている.