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文献詳細

雑誌文献

胃と腸13巻6号

1978年06月発行

今月の主題 胃・十二指腸潰瘍の治療の検討

主題

胃潰瘍のNatural History

著者: 五ノ井哲朗1 五十嵐勤1 児玉健夫1

所属機関: 1福島医科大学第2内科教室

ページ範囲:P.751 - P.759

文献概要

潰瘍症について

 胃・十二指腸潰瘍が,しばしば治癒,再発を繰返すことは,患者の臨床経過から容易に観察されるところである.このような潰瘍の発生が,単なる偶然の反復ではなく,理由があって起こることだとするのも当然な発想であって,その理由となる身体的背景を含めて,潰瘍症という概念がうまれ,潰瘍発生―治癒―再発生という一連の経過を,潰瘍のnatural historyという言葉で呼んできた.そして,潰瘍症という概念は従来,胃・十二指腸潰瘍という疾患についての考え方とか仮説としての次元で採りあげられてきたという感が深いが,しかし,潰瘍についてさまざまの解明が進められてきた現在では,すでに,日常の臨床において現実のものとして当面している問題だという実感となってきた.

 たとえば,問題を疫学的に考えてみると,現在,日本人の胃潰瘍有病率は2.03%ほどであり,治癒する潰瘍の数だけ新しい潰瘍が発生するとして計算してみると,潰瘍の発生率は,全人口に対して年間およそ2.07%程度であると推定される1).もし潰瘍症という概念が架空のものであり,胃潰瘍が不特定多数の日本人に平均的に発生するものとすれば,平均年齢を70年として,すべての日本人は生涯の間に平均1.5回の潰瘍発生を経験することになる.また,1人の患者が,数年の期間に,数回もの潰瘍発生をみるような経過はしばしば経験されるところであるが,それは1億回に1回ほどの確率の事態を観察していることになる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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