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今月の主題 胃・十二指腸潰瘍の治療の検討 主題
十二指腸潰瘍の治療法の評価―外科的立場より
著者: 長尾房大1 青木照明1
所属機関: 1東京慈恵会医科大学第2外科
ページ範囲:P.823 - P.829
文献購入ページに移動 胃・十二指腸潰瘍が全身性疾患としてとらえられ,局所の組織欠損としての潰瘍が治癒消失しても,それは単に病徴としての局所所見が一時隠れたにすぎず,「潰瘍症」自体は治癒したことにはならない,とする考え方は必ずしもそれほど新しく珍しいものではない1).しかし,最近特に長期にわたるnatural historyの研究,Cimetidineのような強力な制酸剤による治療成績などが検討された結果,さらに一層,潰瘍症よりの離脱の困難さ,易再発性が強調されるようになった.世界中の潰瘍学者が注目しているH2受容体拮抗剤であるCimetidineは潰瘍の保存的治療に革命的ともいえる治療成績をあげた.しかし,その減酸効果は服薬中だけのものであり,もちろん永続的なものではない.
他方,手術的治療による成績はelectiveなcaseに対しては術式による差異も微々たるもので,全体としては満足すべき良好な結果が得られている2).手術適応のとり方は一度は保存的に治療しても,再発の時点で手術をすすめるという順序をふむ考え方が,欧米,特に米国を中心に一般的である.経済的,物質的合理主義に立脚した考え方である.しかし,わが国では,必ずしもそうした手術適応のとり方はされていない.潰瘍が再発してもまた根気よく治療し合併症でも招かない限り手術にはふみきらず,ある意味では,潰瘍と共存しながら,一病息災を決め込む方針のものも少なくないのが現状である.これは,手術適応の考え方に内科と外科との見解が必ずしも一致していないという結果でもあるが,しかし,残念なことに,どうも十二指腸潰瘍は胃潰瘍に比し,より唯物的,西欧的であるようで,再発,再燃と共に合併症を招きやすく,なかよく一生共存することは困難なようである.すなわち,わが国での十二指腸潰瘍手術患者の半数近くはなんらかの意味で合併症を有しているものであり,結果的にみると20%近くは要緊急手術患者であることは驚くべき数字であるが,これはひとえにelective caseが少ないためのものと考えてよいようである.著者らはかねてより,これらの点に関し,緊急手術例のmortality,morbidityの高さから,従来からいわれてきた「絶対的適応」は,一種の手遅れ症例であることを強調してきた3)3).近年,十二指腸潰瘍症例(Fig. 1)の増加は著しく手術適応決定の時期選定の困難さはますます問題になっていくものと思われる.特にわが国では,単に“統計的有意性をもって手術的治療法のほうが保存的治療よりも有効である”という事実だけでは手術適応範囲を拡大しようということにはならないという,「手術」に対する日本人特有の思考型が,医者にも患者にもある.いいかえると,手術的治療法を,原則的には,比較的相対的方法とは認めず,絶対的,最終手段であるべきであるとする考え方が根底にあるからであろう.
他方,手術的治療による成績はelectiveなcaseに対しては術式による差異も微々たるもので,全体としては満足すべき良好な結果が得られている2).手術適応のとり方は一度は保存的に治療しても,再発の時点で手術をすすめるという順序をふむ考え方が,欧米,特に米国を中心に一般的である.経済的,物質的合理主義に立脚した考え方である.しかし,わが国では,必ずしもそうした手術適応のとり方はされていない.潰瘍が再発してもまた根気よく治療し合併症でも招かない限り手術にはふみきらず,ある意味では,潰瘍と共存しながら,一病息災を決め込む方針のものも少なくないのが現状である.これは,手術適応の考え方に内科と外科との見解が必ずしも一致していないという結果でもあるが,しかし,残念なことに,どうも十二指腸潰瘍は胃潰瘍に比し,より唯物的,西欧的であるようで,再発,再燃と共に合併症を招きやすく,なかよく一生共存することは困難なようである.すなわち,わが国での十二指腸潰瘍手術患者の半数近くはなんらかの意味で合併症を有しているものであり,結果的にみると20%近くは要緊急手術患者であることは驚くべき数字であるが,これはひとえにelective caseが少ないためのものと考えてよいようである.著者らはかねてより,これらの点に関し,緊急手術例のmortality,morbidityの高さから,従来からいわれてきた「絶対的適応」は,一種の手遅れ症例であることを強調してきた3)3).近年,十二指腸潰瘍症例(Fig. 1)の増加は著しく手術適応決定の時期選定の困難さはますます問題になっていくものと思われる.特にわが国では,単に“統計的有意性をもって手術的治療法のほうが保存的治療よりも有効である”という事実だけでは手術適応範囲を拡大しようということにはならないという,「手術」に対する日本人特有の思考型が,医者にも患者にもある.いいかえると,手術的治療法を,原則的には,比較的相対的方法とは認めず,絶対的,最終手段であるべきであるとする考え方が根底にあるからであろう.
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