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文献詳細

雑誌文献

胃と腸13巻8号

1978年08月発行

文献概要

今月の主題 症例・研究特集 症例

潰瘍性大腸炎を母地として発生した直腸癌の1例

著者: 坂本栄一1 相良正彦1 上村志伸1 安達秀治1 川井三郎1 鳥居有人1 大綱弘2 武藤徹一郎3

所属機関: 1国立病院医療センター外科 2国立病院医療センター病理 3東京大学医学部第1外科

ページ範囲:P.1113 - P.1122

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 本邦における潰瘍性大腸炎は,難病対策研究班の発足以来,急速に活発となり注目されてきた疾患の1つである.

 また,本症が慢性かつ難治性のため,合併症の併発の理由で手術される症例は,次第に増加している.その合併症の1つとして癌化の問題があり,欧米における頻度は1~4%であるが本邦報告例は,極めて稀である.

 われわれは,12年前に潰瘍性大腸炎の診断にて結腸左半切除術を施行した残存直腸に,癌の発生した症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

 症 例

 患 者:49歳 主婦

 主 訴:下痢 粘血便

 家族歴:父が胃癌にて死亡

 既往歴:1964年37歳の時,水様下痢便および血便にて当院受診.注腸造影にてS状結腸のハウストラの消失と右半結腸のハウストラの肥厚を認め,潰瘍性大腸炎の診断にて結腸左半切除術を施行した(Fig. 1).

 切除標本の組織像は,粘膜と粘膜下層を主体とする炎症性変化で,陰窩膿瘍形成,杯細胞の消失,固有筋層内へのリンパ球を主とした細胞浸潤が認められ,潰瘍性大腸炎と診断された(Fig. 2,3).

 しかし,残存直腸,右半結腸に炎症が残っており,手術後のX線所見より炎症症状は増悪し,軟便が4~5行/日,持続するようになった(Fig. 4),近医にて,下痢の激しい時と血便のある時にパラメサゾン3~6mg/日を内服していた.

 現病歴:1976年3月頃より左膝関節部の腫脹と疼痛あり,近医にてアスピリンの投薬中血便多量,持続性となり直腸鏡検査を施行した(今回の受診までの間に大腸の検査が行われたことはない).

 肛門縁より約12cmの直腸に,ほぼ全周性,周堤を伴った陥凹性病変があり,生検の結果腺癌と診断され当院へ送院されてきた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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