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文献詳細

雑誌文献

胃と腸13巻9号

1978年09月発行

文献概要

今月の主題 腸結核(3)―疑診例を中心に 主題症例

腸結核疑診の1例

著者: 多田正大1 川井啓市1 小林顕彦2

所属機関: 1京都府立医科大学公衆衛生学教室 2京都府立医科大学第3内科

ページ範囲:P.1231 - P.1236

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 近年,抗結核療法の進歩による肺結核の減少とともに,本邦においても腸結核は減少しているものの,いまだ日常臨床上,稀な疾患であるとはいい難い1).同時に化学療法の普及によって,腸結核の病像は多少とも変化している可能性もあり,臨床的にも病理学的にも腸結核が典型的な病像をあらわさず,非特異性炎症としての所見を示すにとどまる場合も少なくない.このような場合,潰瘍性大腸炎やCrohn病との鑑別が問題になるであろうが,最近,われわれも炎症が瘢痕治癒してしまい,臨床的にも病理学的にも非典型的な病像しかあらわさなかった腸結核と思われる症例を経験したので報告する.

症 例

 患 者:59歳 女性 調理師

 主 訴:右下腹部の不快感

 家族歴・既往歴:特記事項なし

 現病歴:過去に激しい下痢や下血,腹痛などを訴えたことはなかったが,数年前から時々右下腹部に不快感を訴えることがあった.この間,腹痛,発熱,体重減少や便通異常もなかったため放置していたが,最近,知人に大腸癌が発見されたため,自らも大腸癌を懸念して精査を希望して来院した.食欲は良好で,便通は2日に1行程度の割合で正常便をみる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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