文献詳細
今月の主題 腸結核(3)―疑診例を中心に
主題症例
多発性輪状狭窄を呈した腸結核疑診の1例
著者: 中野元1 藤田晃一1 門野洋児1 岡田安浩1 堀之内幸士1 青沼脩次郎1 八尾恒良2 渡辺英伸3
所属機関: 1福岡赤十字病院内科 2九州大学医学部第2内科 3九州大学医学部第2病理
ページ範囲:P.1243 - P.1248
文献概要
われわれは,長期間にわたり腸閉塞様症状を訴え,X線像で多発性の小腸輪状狭窄を認め,切除しえた空腸の病理学的所見では,いわゆる“非特異性炎症”の像を呈し,腸結核の診断に必要とされている「抗酸菌ないし結核菌」,「乾酪性肉芽腫」のいずれをも証明できなかったが,諸種の成績より腸結核と考えられる症例を経験したので報告する.
症 例
患 者:井○フ○子 61歳 ♀ 主婦
主 訴:腹痛
既往歴:虫垂切除術(47歳),右乳癌根治術(49歳),胆囊摘出術(54歳)
家族歴:特記すべきことなし
現病歴:1967年,胆嚢摘出術を受けた.その後,年に1~2回ほど腹痛(下腹部より心窩部にかけての突き上げるような痛み),腹部膨満感,悪心,嘔吐を認めるも,数日間にて症状軽快するので放置していた.1974年5月,再び上記症状出現し,今回は頑固に持続するために某医を受診し,消化管X線検査を受け,小腸の一部に狭窄を疑われ,1974年7月,検査目的にて福岡赤十字病院に入院した.
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