icon fsr

文献詳細

雑誌文献

胃と腸13巻9号

1978年09月発行

今月の主題 腸結核(3)―疑診例を中心に

主題症例

腸結核を疑わしめた小腸潰瘍の1例

著者: 岸川英樹1 大里敬一12 八尾恒良3 渡辺英伸4

所属機関: 1九州大学医学部第1外科 2現産業医科大学外科 3九州大学医学部第2内科 4九州大学医学部第2病理

ページ範囲:P.1249 - P.1254

文献概要

 本邦における腸結核は昭和30年代後半より減少しているが,最近でも決して稀ではなく,腸の潰瘍性病変をみた場合,まず結核を中心に考えるべきだといっても過言ではない.しかし抗結核剤による治療やそれ自体の自然治癒傾向により,臨床的,病理学的所見の特徴像が著しく修飾される結果,確定診断の困難なものが少なくない.

 われわれは全経過17年の小腸潰瘍1症例において,切除標本の病理組織学的検索で結核を証明しえなかったが,その経過,肉眼所見より結核性としか考えざるを得ない興味ある症例を経験し,その長期経過を通じて最近の腸結核の変遷の一面を少しでも窺い知るものと考え,ここに提示する.

症 例

 患 者:56歳 男性

 主 訴:腹痛,貧血,便秘

 既住歴:小学生時,慢性中耳炎.12歳時,肺炎で2カ月間安静加療,40歳時,腎結核で左腎摘出術を受けた.42歳時,高血圧症.

 家族歴・生活歴:特記すべきものなし

 現病歴:1961年,タール様便,腹鳴,便秘,全身倦怠感などを生じ,某病院で高度の貧血を指摘されて入院,試験開腹が行われた.開腹の結果,腸結核と診断されてそのまま閉腹し,半年間PAS,SM,INHの併用療法を続けて症状は消失した.1964年春より再び上記と同様の症状が続き,同年6月九州大学第2内科に入院,逆行性大腸造影にて盲腸癌が疑われ,開腹術が施行されたが,盲腸に異常は認められず,回腸末端より50cm口側附近に5ヵ所にわたり軽度の輪状狭窄がみられた.腸結核と考え虫垂切除のみ行われた.術後,抗結核剤の併用療法が続けられたが,副作用が強いため3カ月で勝手に通院を中止した.その後も腹鳴,便秘が続き,年に数回上腹部痛をきたしていたが,注射により軽快していた.

 1974年春より上腹部痛が頻回となり,頑固な便秘,貧血も出現,6月下旬九州大学に再入院した.小腸透視により多発性狭窄が確認され,SM,EB,INHの併用療法を行うも改善がみられず,潜血も持続するため手術目的で同年10月外科に転棟してきた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら