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文献詳細

雑誌文献

胃と腸14巻10号

1979年10月発行

文献概要

今月の主題 消化管の健診を考える 主題 他臓器健診の問題点

⑥胆・膵癌

著者: 中沢三郎1 内藤靖夫1

所属機関: 1名古屋大学医学部第2内科

ページ範囲:P.1362 - P.1363

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1.胆・膵癌診断の現況

 近年の種々の統計データをみると,胆・膵系疾患の増加が注目される.その原因としては,日本人の食餌をはじめとする環境の変化と胆・膵系の検査法の進歩があげられる.ちなみに胆・膵癌の訂正死亡率を1970年と1976年でみてみると,人口10万人に対して胆嚢および胆管癌は女で2.5人から3.1人に,膵癌は男で3.7人から4.1人に増加している1).更に丸地は剖検例の検討より,膵癌に対する臨床家の認識はいまだ一般に低く,みおとす割合が高いので,実際の膵癌死亡数は統計に表われる数の約1.5倍に達すると述べている2).またわれわれが経験した胆・膵癌はFig.1のように,過去10年間に著明に増加している.なお1974年以後の例数が横ばいになっているのは,各種検査法の普及によって,多くの施設で診断されるようになったためと推定される.

 ここで胆・膵癌の診断状況を振り返ってみると,10年前はPTC,HDGによる診断法がほぼ確立された頃であり,それまで閉塞性黄疸,腹部腫瘍,肝癌などと診断されていたもので,胆・膵癌の存在が容易に診断されるようになった.しかし診断はできても手術を行いうるようなものはほとんどなかった,次いで,これらの経験の上に,ERCPの導入と血管造影法の進歩が得られ,一応切除可能な症例にも出会うようになった.しかし切除しえた例も固有臓器外に癌浸潤を認めるものが多く,自づからその予後は良いものではなかった.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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