文献詳細
今月の主題 急性胃病変と慢性胃潰瘍の関連をめぐって
序説
文献概要
胃潰瘍の成因については,いままでに数えきれないほど多くの観察が行われてきた.1940年頃までの諸説については,宮地,木下良順篇「医学の進歩」第1輯(1942)に,「胃潰瘍の成因」と綜説している.胃および十二指腸潰瘍は,その一次的或いは二次的作用についてはなお議論のあるところであるが,胃液の自己消化性作用によって形成される.しかし,剖検症例にしばしば見出されるような急性潰瘍と,深い慢性胼胝性潰瘍とは,肉眼的にも,組織学的にも形態の上で異なっており,したがってそこにいたる成り立ち方も同じではない.このような急性期の潰瘍と慢性胃潰瘍という2つの極型の問にある,種々の状態の胃潰瘍とその治癒状態(瘢痕)を整理し,検討しようという試みが,二十数年前に村上と望月によって行われた.当時は,X線や内視鏡的検査が充分でなく,直ちに外科的治療を受けた症例が多く,現在の実態とは異なるが,それだけにより多くの種々の状態の胃潰瘍を観察することが出来た.この仕事の間に,Buchnerの指摘したごとき急性消化性壊死性糜爛が再確認され,また潰瘍底の層状構造の出来上り方の過程がより明らかにされたが,また,潰瘍の深さによる型分類と,発生部位や頻度についての考え方も提示された.Ul-Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ,Ⅳ分類のはじまりであった.
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