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文献詳細

雑誌文献

胃と腸14巻11号

1979年11月発行

文献概要

研究

対称性潰瘍から見た胃潰瘍の発生・成熟過程―その1.Kissing ulcerについて

著者: 村上忠重1 唐沢洋一2 平福一郎3 安井昭4 望月孝規5

所属機関: 1東京医科歯科大学第1外科 2旭川市・唐沢胃腸科外科病院 3Keep財団病院 4埼玉県越谷市・越谷市立病院外科 5東京都立駒込病院病理科

ページ範囲:P.1499 - P.1507

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 胃潰瘍の病因論には種々あって,実験潰瘍学という名前があるほど,動物を用いて各種の研究が盛んに行われているし,また臨床的にはCushingulcer,Curling ulcer,Stress ulcer,Steroid ulcerなどと特別に呼ばれる潰瘍があって,それぞれが潰瘍の病因を示唆すると考えられている.しかしそれらを一元的に解釈するほどの定説はまだでき上っていない.これに反して,潰瘍の組織発生論のほうは大体定説化され,消化液(酸・ペプシン)によるいわゆる組織の凝固壊死Coagulation necrosisがその発生像で,それが数日で脱落したあとに,潰瘍あるいはびらんが形成されるものと信じられるようになった.またこれらの潰瘍やびらんは比較的短時間(週の単位)に修復されるが,同時にまた再発ないしは再燃に陥りやすいと考えられている.

 しかしこの病理組織学的な発生論はあくまで多くの病理組織像を繋ぎ合わせて組み立てた推論であって,さらに真実であるとするためには,その経過が臨床的に忠実に追跡される必要がある.従来はこの種の臨床的追及はほとんど不可能であったが,最近は幸いに,胃粘膜を直視できる内視鏡が発達したので,不可能ではなくなった.しかし依然として困難であることには変わりはない.その理由にはいくつかあるが,癌のように病態が完成するまでに長時間を要する疾患にくらべると,凝固壊死の発生に要する時間はきわめて短く,その瞬間を証明するのに非常に不利であるということがもっとも決定的な理由である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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