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文献詳細

雑誌文献

胃と腸14巻12号

1979年12月発行

今月の主題 胃癌の化学療法

主題

胃癌手術の補助化学療法

著者: 井口潔1

所属機関: 1九州大学医学部第2外科

ページ範囲:P.1617 - P.1622

文献概要

 胃癌の治療の根幹をなすものは外科手術であり,まずは,これによって腫瘍をできるだけ摘除するという段階をとらなければ,化学療法も,放射線療法も,ましてや免疫療法も,それぞれの有する力を充分に発揮することはできない.この外科手術は,ここ10~20年間に,拡大根治手術あるいは予防的リンパ節摘出手術と呼ばれる概念の導入と確立によって,その遠隔成績を飛躍的に向上させた.治癒手術例の5生率は60%前後となって,往時の約2倍近くの成績を誇示している.しかし,それでもなおかつ,40%近くの癌死があることを思えば,手術との併用療法の必要性は明らかであり,手術後の遺残腫瘍が少なければ少ないほど,併用補助療法への期待は大きくなるといえよう.

 わが国では,MitomycinC(MMC)を主体とする化学療法が古くから行われているが,単なるMMCの手術を中心とした短期間の投与では生存率を有意に高めるという確証をつかむまでには至らなかった.われわれは,術後化学療法は,少なくとも術後2年間程度の長期投与が必要と考え,この考えを,術後長期化学療法(postoperative long term cancer chemotherapy-PLCCと略)として提唱してきた.この考えをまずはじめに適用したのがMMCの3カ月ごとの大量投与法であったが,有意の生存率延長に至らなかったので5-FU誘導体のフトラフール(Ft-207,略してFt)と,担子菌類かわらたけ菌子体より抽出の蛋白多糖体のクレスチン(略してPSK)とを術後2年間,stageⅣ胃癌患者に経口投与するという方式を試み,その効果に手ごたえを感じた.とき,あたかも胃癌手術の補助化学療法研究会が組織されて,全国規模のmultihospital randomized studyが可能となったので,その第1次研究として,MMCによる制癌誘導と,Ftによる制癌維持を内容とする方式の有効性を明らかにすることとし,1975年からこれを開始して,現在,その3年生存率を得る時期に至っている.本稿では,これらの経緯と,この全国研究の成績の概要を述べ,現在計画中の免疫化学療法についても若干ふれたいと思う.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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