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文献詳細

雑誌文献

胃と腸14巻2号

1979年02月発行

文献概要

今月の主題 早期胃癌診断の反省(2) 主題

胃生検の功罪

著者: 高木国夫1 中村恭一23

所属機関: 1癌研究会附属病院外科 2筑波大学基礎医学系病理 3癌研究所病理

ページ範囲:P.163 - P.172

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 日本における胃診断学の急速な進歩には,目覚ましいものがあって,X線検査では二重造影法,内視鏡検査では胃カメラ,ファイバースコープさらにファイバースコープによる直視下胃生検が現今胃疾患の診断には欠くべからざるものになっている.1962年にHirschowitzのgastroduodenal fiberscopeがわが国に導入され,すぐに1964年からファイバースコープによる胃生検が臨床的に用いられて,胃疾患の中でとくに,胃癌の診断が胃生検による組織診断の上にたってなされるようになり,早期胃癌の診断が急速に進歩し,微細病変といわれた直径2cm前後の早期胃癌の生検診断が容易になり,現今では,ファイバースコープの器械の進歩と共に,直径5mm以下の微小胃癌に対しても胃生検が行われて,その診断能力が時には,肉眼的限界をこえ,われわれの想像をこえる所にまで達することがある.このような胃生検の進歩にもとづく恩恵は,胃疾患の診断,治療にたずさわっているものにとっては,はかり知れないものがあり,現在では,胃生検が全くといってよいほど安全な検査法になっている.このはかり知れない胃生検の功績に関しては,多くの報告がなされており,早期胃癌の診断に対する胃生検の有用性,良性悪性の鑑別診断,さらに良性悪性の境界病変-異型上皮-の診断等々があるが,他方この胃生検が容易に行いうるようになった反面,この検査の濫用にもとづく誤りも起こりうるものであって,とくに,この胃生検が組織診断という臨床医によっては,オールマイティーにも等しい強固な力をもっているために,胃生検の組織診断の誤りが臨床面にはねかえって診断のプロセスを大きくまげてしまう危険性をはらんでいるものである.

 胃生検の臨床面,病理面での効用と共に,胃生検の誤りを起こしやすい面についても検討を加えて,胃生検を単に確定診断の面のみにとどめずに,さらにX線,内視鏡所見の読みを一層深める上で充分活用したいものである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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