X線診断の立場から内視鏡診断に期待するもの―とくに早期胃癌を中心として
著者:
馬場保昌
,
国武潔
,
田尻久雄
,
大橋計彦
,
二宮健
,
舟田彰
,
佐々木喬敏
,
竹腰隆男
,
杉山憲義
,
丸山雅一
,
高木国夫
,
加藤洋
,
中村恭一
,
熊倉賢二
ページ範囲:P.323 - P.334
はじめに
近年における胃X線・内視鏡診断技術の進歩は著しく,粘膜面の形態が微細なⅡb様病変や1cmに満たない微小な癌巣までも術前に診断されつつある20)21).しかし,一方ではルーチン検査で良性病変と診断したものが癌であったり1),指摘部位とは全く別な部位に新たな癌巣が発見されたり,見逃された癌巣が数年の経過ののちに発見されたりすることも稀ではない.そして,このような症例を集めたretrospectiveな検討を行っても,病変の存在すらわからないものや,病変部の指摘はできたとしても不十分な画像のために性状診断ができないものが多い.ところが,そのいずれにおいても精密検査の段階では,検査の対象となった病変の描出は十分に果たされている.すなわち,精密検査で描出された画像とルーチン検査で描出された画像との差が余りにも大きいことである.ここに画像診断の問題点があり,ルーチン検査のあり方を再検討する必要がある.
一方,精密検査においては,X線・内視鏡それぞれの分野での高度な技術を駆使した検査・診断が必要であることはいうまでもないが,ルーチン検査では病変の存在を能率よくとらえ,診断していく目的がある.ところで,X線・内視鏡検査の診断能を比較すると,病変の存在部位・形・大きさによってはそれぞれに“強い”面と“弱い”面がある.この点に関しても,現在はX線・内視鏡相互の連携による検査体系のあり方を再検討する時期を迎えているといえるであろう.
以上のような観点から,本稿ではX線診断の問題点をルーチン検査と精密検査に分けて検討し,内視鏡診断に期待する点を述べてみたい.主に早期胃癌を中心とした検討である.