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文献詳細

雑誌文献

胃と腸14巻4号

1979年04月発行

文献概要

今月の主題 症例・研究特集 症例

多数の癌化を伴った胃のpolypoid adenomatosisの1例

著者: 板東隆文1 武村民子2 豊島宏1 太中弘1 浅井栄二3

所属機関: 1日赤医療センター消化器外科 2日赤医療センター病理 3日赤医療センター内科

ページ範囲:P.453 - P.459

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 胃角から噴門までの広い中間帯に限局して58コのpolypoid lesionがみられたlocalized polyposis1)の1例を報告する.個々の隆起は無茎または有茎性で,その基本構造は好酸性の強い腺窩上皮類似の上皮からなる腺管増生による隆起であるが,平坦な粘膜内でも腺窩上皮様腺管の増生,延長と粘膜深部での囊胞状拡張やexpansiveな結節状の増殖巣を認めることから腫瘍性性格を持つと考えざるをえない.そこで個々の隆起をadenomaと診断し,本症例はpolypoid adenomatosisと呼ぶのがもっとも適当であると考えた.

 胃の腺腫あるいは腺腫性ポリープに関しては実だ明確な定義はなく,病理学者によってその意義が異なり,さらに同一病理学者でも発表年次によって用語が変っていることはWelch2)の指摘の通りで混乱を招いている.本症例はMingのregenerative polyp3),Tomasuloのhyperplastic polyp4),佐野5),武藤6)の腺腫性ポリープ,あるいは中村のⅡ型7)などいわゆる過形成胃ポリープの範疇に属さず,また一方では,Ming,長与8)のadenomatous polyp,福地,望月9)のⅡa-subtype,中村Ⅲ型などいわゆる異型上皮の集簇とも明らかに異なるpolyposisで,5コのポリープに癌化が認められたことから癌化のpotentialが高い特殊なタイプの胃のpolypoid adenomatosisと考えられる.胃にこのようなadenomatosisが存在するのは驚きであり,また同時に本症例は大腸と同様に胃においてもadcnoma-cancer transitionを示唆する点で極めて興味深く,調査しえた内外の文献にはこのタイブの胃のpolyposisの報告を見ない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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