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文献詳細

雑誌文献

胃と腸14巻8号

1979年08月発行

今月の主題 微小胃癌

序説

微小胃癌の特集に当って

著者: 長与健夫1

所属機関: 1愛知県がんセンター研究所第一病理部

ページ範囲:P.1025 - P.1026

文献概要

 癌のひろがりが胃の粘膜内かまたは粘膜下層までにとどまっているものを,われわれは早期胃癌と定義している.この時期に癌を発見し手術切除をすれば患者の予後が十分に期待できるという意味でこの定義は的を射ているといえようが,癌が胃の粘膜に発生してから粘膜筋板を破って粘膜下層へ増殖を開始するまでに,多の差はあるにしても5年から10年かかるであろうことが次第にはっきりしてくると,胃癌の自然史を時間的に3等分して早期,中間期,晩期とした場合の早期と,早期胃癌でいう早期の間には,大きな時間のズレがあることになる.そのズレを少しでも少なくするには,より初期の変化を探し出すことが必要になってくる.このことはただ議論のための議論としてではなく,早期発見の限界に挑むという点から,また胃癌の組織発生を解明する点からも,自然に生じてくる精神活動の1つの流れのようなものである.

 われわれが,Ⅱc+Ⅲ型とかⅡa+Ⅱc型と呼んでいる早期胃癌が,どのような状態の胃粘膜からどのような形の変化をへて発生発育し,そこにまで辿りついたかを正確に知ることは,個々のケースを対象としたのでは不可能であるし,多くの症例の組織所見から帰納したとしても限度があるが,今までの経験からしてより小さいか,あるいはより軽い病変が先行して,それが徐々にある程度の拡がりをもつ粘膜癌にまで成長してきたものであろうことは推察できる.しかしここに難問が横たわっている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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