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文献詳細

雑誌文献

胃と腸15巻1号

1980年01月発行

文献概要

今月の主題 胃病変の時代的変貌 主題

胃潰瘍の時代的変貌

著者: 五ノ井哲朗1 植木洋司2

所属機関: 1福島県立本宮病院 2福島医科大学第2内科

ページ範囲:P.27 - P.33

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 世につれ,時代につれ,変遷の跡の明らかな疾患があり,そうでない疾患がある.前者は,たとえば伝染病であり,後者は癌や動脈硬化症などである.潰瘍はそのどちらであろうか.一般には,消化性潰瘍の有病率や発生率は,時代時代の社会的状況を反映しながら消長してきたとするのが通念のようにみえる.しかも,このような前提に立って,面白いことには,いつも,日本人の消化性潰瘍が増加していることが強調され,その背景として文明や戦争,社会生活や食生活の変遷などとの関連が論じられてきた.とすれば,日本人の消化性潰瘍は時代とともに増加の一途を辿ってきたということになる.

 しかし,これを読む者がいつも隔靴掻痒の思いを強いられるのは,これらの記述がきまって,「最近,潰瘍が増加していることは誰しも異論のないところ……」,「最近,潰瘍が増加しているという声がしきり聞かれる……」というふうで,一向に,具体的な根拠が示されていないことである.また,そうでなければ,臨床において患者が増加したという数字が,いつのまにか,潰瘍の発生が増加したという話にすり変わってしまうという,論証の展開の曖昧さのためである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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