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今月の主題 腺境界と胃病変 主題
臨床病理学的にみた腺境界―腸上皮化生のない胃底腺粘膜を限界づける線について
著者: 中村恭一12 菅野晴夫2 加藤洋2
所属機関: 1筑波大学基礎医学系病理 2癌研研究所病理科
ページ範囲:P.125 - P.136
文献購入ページに移動ひるがえって,筆者らは胃癌の組織発生に関し「未分化型癌は胃固有粘膜から,一方,分化型癌は胃の腸上皮化生粘膜から発生し,癌発生後は,癌もまた正常細胞の分化の過程を模倣している」とのことを主張している1)2).この組織発生からは,「胃固有粘膜の一つである胃底腺粘膜から発生する癌の組織型は,未分化型癌であらねばならぬ」という命題が派生する.なぜならば,胃癌の好発部位は幽門前庭部で,胃癌組織発生の概念を導くにあたっては対象の大部分が幽門前庭部に発生した癌であり,幽門前庭部は一般的に幽門腺粘膜で裏打ちされている場であるからである.この命題を証明するための必要かつ十分条件は,胃切除時点で癌が腸上皮化生のない胃底腺粘膜領域に存在していてその組織型が未分化型であり,そして,腸上皮化生のない胃底腺粘膜領域を限界づける境界が時間の経過とともに不可逆的にその領域の収縮する方向に変化するか,あるいはその境界が不変であることである.なぜならば,胃切除時点で癌が腸上皮化生のない胃底腺粘膜領域に存在していても,その領域を限界づける境界線が経時的に可逆的に変化するものであるならば,その癌が発生した時点では腸上皮化生をともなう胃底腺粘膜領域であったかもしれないからである.以上のようなことから,腸上皮化生のない胃底腺粘膜領域を限界づける線をF境界線(F boundary line)と定義して,その経時的変化を報告している3).
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