大腸早期癌の診断に関する知見補遺―とくに診断基準の再検討およびポリペクトミーの諸問題
著者:
丸山雅一
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佐々木喬敏
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横山善文
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権藤守男
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馬場保昌
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二宮健
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田尻久雄
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大橋計彦
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杉山憲義
,
竹腰隆男
,
高橋孝
,
加藤洋
,
舟田彰
ページ範囲:P.375 - P.391
本誌で大腸の早期癌の診断がはじめて取り上げられたのは,5巻11号である.このとき筆者はX線診断を担当した(丸山,19701)).当時は,すでに完成されつつあった早期胃癌の診断法の余勢に乗じて,大腸の早期癌の診断をも制覇してしまおうという気負いがあった.しかし,現在に比べれば,症例数が不足していた.早期胃癌の定義に準じて病理が早期癌と診断してくれた病変のX線所見をretrospectiveに検討するところから大腸早期癌診断の第一歩を始めるしかなかった.このようにして症例を集め出して後,数年を経た頃,早期癌の肉眼的特徴と深達度にある程度の関連を認めたので,1973年(丸山2))になって大腸早期癌の診断基準なるものを発表した.これは,それまでは絶えずretrospectiveであった診断の思考過程を,この時点からprospectiveなものにしたことで,筆者にとっては大きな前進であった.
一方,この頃すでに診断基準に合わせにくい病変が若干存在することは承知していた.しかし,大勢に影響はないと考え,最近まではこれらの病変を意図的に無視してきたいきさつがある.それらは深達度mの無茎性早期癌とvillous tumorである.ところが,最近になって,これらの病変のことが急に気になりだし,癌研の記録に残る最初の症例から,手術および病理のレポートを読みなおしてみた.そして,「特に気になる病変」についてはブロックを捜し出し,標本を作り直して検討しはじめた.この作業は未完成ではあるが,ともかくも得られた結果を分析してみると,大腸早期癌の肉眼形態と深達度に関しては若干の手直しが必要であるとの結論を得た.そこで本文の最初ではまずこのことにっいて述べてみたい.