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文献詳細

雑誌文献

胃と腸15巻5号

1980年05月発行

今月の主題 胃のGiant Rugae

主題

巨大皺襞の内視鏡的鑑別診断

著者: 早川和雄1 竹内和男1 山田直行1 福地創太郎1 西蔭三郎2

所属機関: 1虎の門病院消化器科 2虎の門病院病理学科

ページ範囲:P.509 - P.517

文献概要

 胃内に巨大皺襞を形成する代表的な良性疾患として,メネトリエ病が広く知られている.しかしながらメネトリエ病の概念に関しては,病理学的にも臨床診断の上からも,少なからず混乱があり,未だ統一された見解が得られていない.1888年1),メネトリエは広汎な胃粘膜の腺腫様増殖を示す疾患を,polyadénomes polypeuxとpolyadénomes ennappeとに分類して記載した.polyadénomes polypeuxは,いわゆるびまん性のpolyposisと考えられ,polyadénomesennapPeとして記載された症例に類似したものを,後にメネトリエ病と呼称するようになった.彼の記載するpolyadénomes ennappeの要約2)は“胃腺の肥大による粘膜の肥厚により,粘膜鍛襲が,大脳の回転を思わせる程に非常に発達した良性の病変”ということである.しかしながら,胃腺の肥大に関する具体的な記載がないことより,その後のメネトリエ病の報告の中に,病理学的に種々の病変が含まれ,この病名の混乱が起こったものと思われる.胃腺が本来の構造を保ったまま厚くなった腺性肥厚性胃炎の一種とするもの3),腺窩上皮の過形成による萎縮性過形成性胃炎の一種とするもの,など種々の考え方がある.また臨床的に,低蛋白血症や低酸症がメネトリエ病に多く認められたためこれらの症状を同症の定義に含めるという考え4)もあったが,メネトリエの記載した症例では,腹水や浮腫を伴うが,低蛋白血症や低酸症について直接言及されておらず,また,これらの症状を伴わない症例の報告もあり,現在では特にメネトリエ病の診断に必須のものではないとされている5).他方,巨大皺襞を形成する疾患として,Borrmann 4型胃癌,悪性リンパ腫などの悪性疾患があるほか,ある種の粘膜下腫瘤,胃静脈瘤,Cronkhite-Canada症候群などが,時に良性の巨大皺襞と紛わしい所見を呈することがある.

 本稿では,われわれの経験した典型的なメネトリエ病を含む,内視鏡的に巨大皺襞を示した良性の疾患について検討するとともに,他疾患の続発病変としての巨大皺襞との内視鏡的鑑別診断の要点について述べてみたい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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