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文献詳細

雑誌文献

胃と腸15巻7号

1980年07月発行

文献概要

今月の主題 消化管出血と非手術的止血 止血法の実際

高張Na-Epinephrine液(HS-E)局注療法

著者: 平尾雅紀1 山崎裕之2 升田和比古2 小林多加志2 山口修史2 河内秀希2 佐藤冨士夫3

所属機関: 1勤医協中央病院外科 2勤医協中央病院内科 3勤医協中央病院病理科

ページ範囲:P.751 - P.755

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 消化管出血,特に上部消化管の大量出血例に対して,緊急内視鏡検査を行い,出血源の正確かつ迅速なる診断を行うことは,その病態の把握および治療に大きく寄与することは,よく知られている.上部消化管出血のうちで胃および十二指腸からの出血は91%を占める1).これらに対する内視鏡的止血法の確立は極めて重要である.出血性潰瘍に対する治療指針ないし重症度判定規準は,長尾1),川井2)3)らが一般的である.しかし最近,特にこの10年間の内視鏡技術のめざましい進歩は,消化管出血に対する概念を一変させつつある.診断学にとどまらず,大きく治療の面にも比重を加えつつある.クリッピング法,高周波電気焼灼法,エピネフリン撒布法など,種々考案され試みられている5)8)15).特に内視鏡的レーザー止血法は注目を集め14),日本においても精力的に開発が進められている16).実際に消化管出血時の内視鏡検査では,出血という条件下で,迅速性,手技の簡便性が要求される4)

 われわれの開発した内視鏡下,高張Na-Epi-nephrine液(HS-E)局注療法はその問題点を満足してくれるものと思われる.出血血管の止血は理論的には,血管内の血栓形成と同血管壁の器質的変化による閉塞を起こし,永久止血効果を得ることが望ましい.HS-E局注療法は,エピネフリンの強力な薬理作用である血管収縮作用と高張液の物理化学的性質を組み合わせることにより得られる止血方法である.その作用機序は高張Na液によるエピネフリンの作用持続時間の延長,周囲組織の膨化,血管壁のフィブリノイド変性,血栓形成という一連の変化によるものであり,そのような器質的変化をきたすことは基礎的検討により判明した6).また,実際に臨床的にも満足すべき成績をあげてきたといえる7)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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