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文献詳細

雑誌文献

胃と腸15巻9号

1980年09月発行

文献概要

今月の主題 胃リンパ腫(1)―悪性リンパ腫 序説

「胃悪性リンパ腫」特集に当たって―病理形態学の面から

著者: 望月孝規1

所属機関: 1東京都立駒込病院病理科

ページ範囲:P.904 - P.904

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 消化管の悪性腫瘍のうち,悪性リンパ腫はまれな腫瘍であるが,癌腫以外の悪性腫瘍の中では頻度が高く,小腸では最も多い,本来,胃壁には,回腸末端部や虫垂のごとくリンパ装置は存在しないが,粘膜の病変に伴って発達してくると考えられている.胃の悪性リンパ腫の母地が,このようなリンパ装置であるか否か,またリンパ節より発生する悪性リンパ腫との形態や発生形式の異同があるか,という問題が生じている.事実,胃の悪性リンパ腫の症例のあるものでは,併存したりあるいは連続しているリンパ組織の増生が胃粘膜と粘膜下層に認められる.

 胃は異なった構造と機能を有する3つの層より成る管腔臓器であり,そういう形態の中での悪性リンパ腫の増殖の形はリンパ節と異なる点が多く,胃の他疾患との鑑別が実際診療上必要となってきている.特に,癌腫および反応性リンパ細網組織過形成と称される病変などとの異同が問題となるが,一般的にいって生検組織学的診断に際しては,悪性リンパ腫の細胞が挫滅されやすいこともあって,癌腫の場合ほど決定的な診断を下しえないこともあり,X線と内視鏡的所見を含めての総合的な鑑別診断が必要である.この原則は,悪性リンパ腫に限らず他の病変についてもあてはまることではあるが.そこで第1に肉眼的特徴について検討が行われ,基本的な形態についての問題提起がなされるに至った.これにより,早期胃癌やBorrmannの分類によって正確に表しえなかった形態的特徴がはっきりしてくると期待される.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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