今月の主題 胆道系疾患の臨床(2)―胆管異常を中心として
主題
胆管末端部(乳頭部)狭窄症
著者:
中島正継1
安田健治朗1
藤本荘太郎2
加藤元一3
岩破淳郎4
川井啓市4
所属機関:
1琵琶湖胃腸病院内科
2京都第二赤十字病院内科
3京都第二赤十字病院外科
4京都府立医科大学公衆衛生
ページ範囲:P.1185 - P.1199
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内視鏡的胆・膵管造影法(ERCP)の普及によって膵・胆道系の診断や形態の把握が容易かつ確実に行えるようになった今日では,この領域において形態的にも機能的にも最も複雑な部位である乳頭部の病変,とりわけ良性の胆管末端部狭窄症(benign stenosis of the distal common bile duct)の病態や診断に対する新たな興味が高まりつつある1)~6).本症は古くよりOddi氏括約筋炎(odditis)とか乳頭炎(papillitis)と呼ばれてきたもので7)8),胆石症,胆管炎,胆摘後症候群,胆道ジスキネジーあるいは膵炎などと病因的に密接な関係にある臨床疾患単位として殊に外科医には銘記されており7)~12),最近ではその病態を反映した名称として乳頭部狭窄症(stenosis of the papilla of Vater,papillary stenosis)やOddi氏括約筋狭窄症(stenosis of the sphincter of Oddi)が主に用いられる傾向にある2)4)5)9)11).しかしながら,本症には器質的要素だけでなく括約筋運動の異常による機能的要素も関係しているため,その病態は極めて複雑,難解であり3)10)11),1つの独立した疾患としての臨床的意義や診断基準も,未だに確立されていないのが現状である.本稿においては,本症の実態を明らかにすべく,種々の観点からみた本症の意義や診断について著者らの考えを述べてみたい.