今月の主題 胃リンパ腫(2)―良性リンパ腫
主題
胃良性リンパ腫の内視鏡診断
著者:
吉井由利1
小林世美1
春日井達造1
所属機関:
1愛知県がんセンター病院第1内科
ページ範囲:P.145 - P.151
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本病変が,主として粘膜上皮下層のリンパ系および網内系細胞の増生によるものである以上,胃粘膜の表面にあらわれた肉眼的変化をとらえようとする内視鏡的手段でその変化を的確に表現することは大変難しいことであり,病理組織学的にも良性,悪性の鑑別に困難を極める例があるというのに,肉眼的にその鑑別を試みることは,至難の業と考えていた.しかしながら,lymphoreticular tissueの増生が著しい場合に,胃粘膜にも肉眼的な変化があらわれ,X線診断および内視鏡的に,胃の悪性腫瘍とまぎらわしい所見を呈することが,Konjetzny(1928,1938)1),Schindler(1937)2)らにより指摘されて以来,この病変が注目されるようになり,その報告例も増加しつつある現実を踏まえ,この機会に自験例および他2施設からの提供例と既報告例を参考とし,文献的考察を加えて,この病変の内視鏡像の特徴について解析を試み,内視鏡診断の可能性と限界,殊に誤診されやすい悪性リンパ腫と早期胃癌を中心に,その鑑別の可能性を追求した.