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文献詳細

雑誌文献

胃と腸16巻3号

1981年03月発行

文献概要

今月の主題 虚血性腸炎の臨床と病理 主題症例 虚血性腸炎

狭窄型虚血性大腸炎の1例―注腸X線像の推移を中心に

著者: 牛尾恭輔1 平嶋登志夫2 山脇義晴1 森山紀之1 岡崎正敏1 松江寛人1 笹川道三1 山田達哉1 板橋正幸3 廣田映五3 市川平三郎1

所属機関: 1国立がんセンター病院放射線診断部 2国立がんセンター病院内科 3国立がんセンター病院病理部

ページ範囲:P.295 - P.301

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 腸の虚血状態は,その程度と範囲の差により,各種の腸病変を引き起こすことが知られている.腸間膜動脈などの主幹動脈の閉塞に基づく広範囲な腸壊死は,その代表的な重篤な疾患と言える.しかし最近,病変の範囲も狭く,また変化も軽度で死に至らない大腸の虚血性病変が注目され1),虚血性大腸炎(ischemic colitis)という名称のもとに疾患の概念が確立しつつある2)3).われわれは腹痛,下血,発熱をもって急激に発症し,臨床所見およびその経過,X線像と内視鏡所見より,狭窄型の虚血性大腸炎と診断しうる1例を経験した.しかもこの例について,注腸X線像を経時的に追跡しえたので,そのX線所見の推移を中心に報告する.

 症 例

 患 者 61歳,男.

 主 訴 左側腹部痛,下血.

 既往歴 肺炎(18歳),胃潰瘍(57歳).

 家族歴 兄に胃癌あるほかには,特記すべき事項なし.

 生活歴 外国での居住歴なし,その他特記すべき事項なし.

 現病歴 45歳ごろより高血圧を指摘され,某院にて内服治療中であった.1974年の夏ごろより,歩行時に時々,左前胸部の不快感を覚えていたが,2~3分間の安静で消失していた.1974年9月6日より3日間排便がなく,9日の朝,食事後に浣腸したが排便はなかった.正午ごろ,急に悪心嘔吐があり立ち上がれなくなったので,救急車にて某院受診した,そのときの最高血圧は240mmHgであった.午後1時ごろより急に左の下腹部と側腹部痛を認め,午後3時には,便器いっぱいに血餅様の黒色便を排出した.翌10日にも腹痛と下血は続き,疲労感と全身倦

怠感を覚え,通常200mmHgある最高血圧が146mHgに低下したので,11日,車椅子にて国立がんセンター病院に入院した.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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